さて、今回は各メーカーから販売されたおもちゃデジカメを比較する企画です。2000年後半に発売された30万画素機を比較してみました。
比較する機種
今回比較するのは、30万画素おもちゃデジカメとしては、初期に販売された3機種です。
マクセル WS30
2000年9月に発売され、ヒット機種となったこちらのモデル。高級感のあるデザインに申し分のない機能が搭載されています。
カシオ LV-10
2000年11月に発売されたもの。デジタルカメラを一般に普及させるきっかけを作ったカシオが放つ初心者向けデジタルカメラです。こちらもヒットしました。
アドテック LiVE RC35
2000年12月に販売された、上2機種に比べてマイナーな存在の機種。パソコン用メモリを販売していたアドテックというメーカーの商品です。
スペック比較
マクセル WS30 | カシオ LV-10 | アドテック RC35 | |
画像素子 | 35万画素 | 30.7万画素 | 35万画素 |
メモリ | 8MBフラッシュメモリ | 4MBフラッシュメモリ | 2MBフラッシュメモリ |
レンズ | マルチコート非球面レンズ F4.0 f=5.13mm | 固定焦点方式 F2.8 f=6.2mm | 詳細不明 |
焦点距離35ミリ判換算 | 35mm相当 | 42mm相当 | 50mm相当 |
VGA保存枚数 | 最大127枚 | 約60枚 | 26~36枚 |
撮影範囲 | 0.6m~∞ | 約0.65m~∞ | 約0.4m~∞、 |
マクロモード | 0.2m | なし | なし |
絞り | F4.0 | F2.8 | F2.0 |
シャッター速度 | 1~1/10,000秒 | 1/15~1/4000秒 | 1/5~1/2000秒 |
セルフタイマー | 約10秒 | 約10秒 | 約10秒 |
オートパワーオフ | 約120秒 | 約90秒 | 約90秒 |
ストロボモード | オート / オフ | オート / オフ | オート / オフ |
サイズ | 86×56×26mm | 94×63×34mm | 90×70×30mm |
重量 | 約80g | 約120g | 約100g |
電池 | 単3形電池×2本 | 単3形アルカリ電池×2本 | 単3形アルカリ電池×2本 |
発売時の実売価格 | 15,000円程度 | 10,000円前後 | 9,500円前後 |
ほぼ同じ時期に販売された機種とはいえ、メーカーによりずいぶんとスペックが違っています。マクセルWS30は値段が高い分、スペック的にも良くなっています。アドテックRC35は値段が安い分、機能を削っています。カシオLV-10はその中間で、値段と機能のバランスを重視したようです。設計思想の違いがよくわかるかなと思います。
注目すべきは絞りとシャッター速度。おもちゃデジカメでは、シャッター速度を明記している機種は少ないのですが、この3機種は説明書に明記されています。WS30は絞りF4.0と暗いけど、シャッター速度の幅は広い。アドテックRC35はF値が明るいけど、シャッター速度は1/2000秒までなので、露出オーバーになりやすい。このF値とシャッター速度の違いは、写りの差に大きくかかわってきます。
セルフタイマーの時間やストロボモードは同じ。オートパワーオフの時間はWS30が30秒長い。この辺りはそれほど変わりはありません。
メモリ容量やマルチコートレンズの使用、マクロモードあり、シャッター速度の幅など、スペックとしてはWS30の圧勝です。ただ、その分値段が高いので当然でしょう。
見た目
WS30
LV-10
RC35
まとめ
3機種ともプラスチック製外装ですが、見た目の高級感があるのはWS30。コンパクトで引き締まったデザイン、色もシャンパンゴールドで安っぽさはありません。他の2機種も色はシルバーで、この時期の他のおもちゃデジカメに比べると、カメラらしいデザイン。残念なのがLV-10の後ろ側がいかにもプラスチックで安っぽく感じてしまうところです。
見た目ではやはりWS30の圧勝といったところです。
画角の違い
画角とは、実際に写る範囲を角度で表したものです。焦点距離が長くなると画角は狭くなります。ただ、角度で表記してもわかりづらいので、35ミリフィルムカメラの焦点距離で表すことが多いです。センサーのサイズによってもかわりますので、一般的に普及していた35ミリフィルムカメラの焦点距離から写る範囲を想像してくださいということです。50mmが標準、35mmで広角と呼ばれます。
上の画像は普段使用しているオリンパスStylus 1sで撮影したものです。ズームレンズで焦点距離を変えながら撮影しました。実際にメーカーが明記している焦点距離と比較してみます。
マクセル WS30
メーカーの値通り35mm相当です。
カシオ LV-10
こちらもメーカーの値通り、42mm相当です。
アドテック LiVE RC35
アドテック RC35のレンズに関しては、メーカーの数値がないので、実際の画像を見比べて判断します。50mm相当としましたが、46~50の間といったところでしょうか。何にしてもアドテックRC35が一番画角が狭くなっています。
まとめ
画角は人によって好みがあるのでどれが良いとは言えません。個人的には35mm相当のWS30がスナップ写真としては、使いやすいかなと思います。
操作性比較
3機種ともそれほど機能はありませんが、設定方法の操作が少し違います。
WS30とRC35がMODEボタンで順番に選択していくのに対して、LV-10はセルフタイマー、ストロボのオート/オフにそれぞれボタンが与えられています。
WS30
MODEボタンで選択して、SELECTボタンで切り替え。ストロボ設定モード、画像カウンターモード、セルフタイマーモード、画像削除モードの順で切り替えていきます。
電源ボタンが誤動作防止のためか、少し奥まっているため押しにくいです。その分知らないうちに電源が入っていたということが少なくなります。
LV-10
画像サイズ/削除、セルフタイマー、ストロボとそれぞれボタンが分かれており、設定へのアクセスは3機種中いちばん良いです。
電源スイッチはスライドさせてオン。ボタンを押すタイプと違い、知らないうちに電源がオンになることは少ないです。
RC35
MODEボタンで選択して、SETボタンで決定します。ストロボオン、ストロボオフ、セルフタイマーオン、セルフタイマーオフ、1枚削除、全削除の順で切り替えていきます。
電源ボタンは他のボタンが出っ張っているのに対して、本体からは飛び出しておらず、誤動作防止を考えられています。
まとめ
圧倒的に操作のしやすいのはLV-10。他の機種は設定したいところにたどり着くまでに複数回ボタンを押す必要がありますが、LV-10はほぼワンタッチで設定できます。どの機種も電源を切るとモードが初期化されるので、アクセスの楽さは重要です。
撮影画像比較
実際に同じ条件で撮った画像を比較してみたいと思います。
晴天での撮影
晴天時に撮影した画像を比較します。左上が基準となるStylus1sで、焦点距離50mm撮影したものです。Stylus1sの撮影データをあわせて書いておきます。ISO100固定、絞り優先モードを使って基本F2.8で。シャッター速度が足りない時は、絞っています。
Stylus1s:ISO100、F3.5、1/2000
RC35は壁面の絵がすっ飛んでしまっていますが、WS30とLV-10はきちんと撮れていますね。LV-10はF2.8固定なので、ISO100と仮定したら、1/4000で撮っているということになります。
空の色はCMOSセンサーの場合、赤みがかってしまいます。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/2000
LV-10は空が赤みがかっているのに、WS30はすっきりとしています。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/2000
Stylus1sの写真を見るとわかるのですが、バッテン部分の黄色はポール部分に比べ、少し色あせています。RC35は彩度が低いので、全体的にあせた感じですが、WS30とLV-10は黄色が強調されています。おもちゃデジカメの画像の面白いところです。
Stylus1s:ISO100、F3.5、1/1250
Stylus1sはシャッター速度を1/1600か1/2000で撮るべきでした。ちょっとオーバー気味、砂地の部分が飛び気味ですね。RC35はF2.0で1/2000秒までしかないので、これは仕方がないですね。
発色の検証のつもりで撮影。LV-10はピンクの彩度低め、WS30は黄色みがちょっと強いですか。ピンクがサーモンピンクっぽい。RC35は白飛びが激しいのと、彩度はかなり低めですね。
Stylus1s:ISO100、F4、1/2000
おもちゃデジカメが苦手な逆光での撮影。RC35はやはり厳しいですが、WS30とLV-10は空を白飛びさせず顔も潰さずでうまく撮れています。WS30は広角な分、光が映り込んで、ゴーストが出てしまっています。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/1600
ラチチュードの確認するために撮ってみました。日陰の部分が潰れていないか、空や光の当たる壁が白飛びしていないかの確認です。
LV-10とRC35がフレアっぽい感じ、WS30はゴースト発生しています。RC35は空や壁は白くすっ飛んでますが、WS30とLV-10は白飛びは少ないですね。
WS30のレンズはマルチコートなので、フレアにはならなかったのでしょう。
曇天での撮影
曇天時に撮影した画像を比較します。
Stylus1s:ISO100、F3.2、1/2000
RC35は相変わらずです。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/2000
WS30は晴天時はそれほど感じませんでしたが、曇天時は空の色の赤みが強くなるようです。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/2000
これもWS30の赤みが目立ちますかね。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/1250
晴天時と同じく発色の検証。曇天下ではRC35も白飛びが少なく済みました。発色の傾向は、晴天時と同じです。WS30の色味が好みです。
室内撮影
最後に室内で撮影したものを。ストロボモードをオートで撮影。
Stylus1s:ISO100、F2.8、1/6、ストロボ使用せず
WS30とLV-10はストロボが点灯、RC35はストロボは点灯せず。RC35は少々暗くても、室内での撮影に強いです。画質はなんともいえませんが、まぁ撮れます。
等倍で見るジャギー、ノイズ
おもちゃデジカメは撮影サイズがVGA(640×480)と解像度が低いため、どうしてもジャギーが出てしまいます。また、撮影枚数を多くするために、JPG形式でも圧縮率は高め。等倍で見るとこれらが目立ってしまいます。その辺りの確認です。
WS30
電線のジャギーを押さえようと頑張っている印象。それに比べて空の部分は綺麗なグラデーションにならず、ブロックノイズのようになっています。WS30の最大の弱点が、圧縮しすぎなところ。
LV-10
こちらもジャギーを押さえようと頑張っています。WS30に比べると空のグラデーションが綺麗です。
RC35
露出に問題がありますが、電線のジャギーは頑張って押さえています。変な圧縮感もありません。
パソコン用ドライバーソフト
撮影した画像をパソコンに取り込むためのソフトの比較です。昔のソフトなので、あまり突っ込んだことは考えずに使い勝手の良さを比較します。
ws30
単独起動しないドライバーソフトです。グラフィックソフト経由で保存をしなければなりません。保存形式はグラフィックソフトに依存していますが、カメラ内で保存する時にすでに圧縮されています。
転送速度は速く、取り込み自体は苦にならないですが、一括して保存する機能がないので、1枚ずつグラフィックソフトで名前をつけながら保存するしかありません。カメラの撮影可能枚数が多いだけに、まとめて取り込もうとするとかなり大変な作業になります。
LV-10
単独でも起動する専用ソフト。グラフィックソフトに転送することも、フォルダに保存することも出来ます。画像の保存はJPG形式で行われ、圧縮率の選択などは出来ません。
取り込むだけならこれが一番です。
RC35
単独起動しないドライバーソフトです。パソコンに取り込む際、すべて選択という項目がなく、shiftキーを使って選択しなければなりません。また、グラフィックソフト経由で保存をしなければならないなど、使い勝手は悪いです。保存形式はグラフィックソフトに依存しています。
WindowsXPでの使用はちょっと不安定です。
まとめ
以上、色々と比較してみました。
見た目やスペック的なもの、レンズの優秀さなど、やはりWS30が良いのは確かです。残念なのが、圧縮しすぎな印象の画像。等倍で見ると青空なんかが気持ちよくないですね。もし、撮影枚数を落としてでも、高画質モードの設定があれば、完璧だったでしょう。他のマイナスポイントは、ドライバーソフトの使い勝手の悪さ。
思っていたより良い印象を受けたのがLV-10。最初、評価が低かったのは見た目の安っぽさが原因なのですが、実際に使うと操作性も良いですし、撮れる画像もなかなかのもの。この辺はさすがカシオといったところ。ドライバーソフトも単独で起動して、一括保存できるなどパソコンとの連携の部分でもよいですね。シャッターボタンにクリック感がないのが残念。これが撮影していて、気持ちの良くないところです。
RC35はやはり安かろう悪かろうの印象が強いですね。デジタルカメラの最初の1台としてこれを選んだ人は、やはりおもちゃデジカメは使えないと思ったでしょう。残念な出来です。