さて、今回は西国三十三所巡りの第1弾、1番札所青岸渡寺に行った話です。青春18きっぷを使って、日帰りで行く弾丸参拝をしてきました。
青春18きっぷ
いよいよ冬の青春18きっぷシーズンがやってきました。鉄旅好きにはおなじみのこちらのきっぷ。
12,050円で5回利用でき、普通車と快速列車の自由席が乗り放題となります。1日あたり2,410円で乗り放題なので、貧乏旅の強い味方です。冬のシーズンは販売が、2019年12月1日から12月31日まで、利用期間は2019年12月10日から2020年1月10日までになっています。
四国遍路を終えてから、次は西国三十三所巡りへ行こうと考えました。しかし1番札所が家から少し遠い和歌山県那智勝浦にある青岸渡寺なので、電車賃を抑えるために青春18きっぷが使える日を待っていました。
西国三十三所巡り
西国三十三所(さいごくさんじゅうさんしょ)は、近畿2府4県と岐阜県に点在する33か所の観音信仰の霊場の総称。これらの霊場を札所とした巡礼は日本で最も歴史がある巡礼行であり、現在も多くの参拝者が訪れている。
「三十三」とは、『妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五』(観音経)に説かれる、観世音菩薩が衆生を救うとき33の姿に変化するという信仰に由来し、その功徳に与るために三十三の霊場を巡拝することを意味し、西国三十三所の観音菩薩を巡礼参拝すると、現世で犯したあらゆる罪業が消滅し、極楽往生できるとされる。 令和元年に日本遺産に認定された。
~Wikipediaより
四国お遍路は弘法大師の足跡をたどる旅でしたが、西国三十三所巡りは観音菩薩を巡る旅であります。四国お遍路と違い、歩いて巡拝する人は少ない。近畿の有名なお寺を巡る、観光ツアー的な要素が大きいかもしれません。
私の住む奈良県からは日帰りで行ける札所も多く、公共交通機関を利用しつつ、出来るだけ歩いて訪れたいと思っています。冬と春の青春18きっぷを使って、2020年4月までに結願することを目指しています。
青岸渡寺
青岸渡寺(せいがんとじ)と聞いても、どこそれ?の人が多いかもしれません。那智の滝とか熊野那智大社と言えば、場所をすぐに思い浮かべることが出来るのではないかと思います。その那智大社と隣接するのが青岸渡寺で、神仏習合のお寺です。
ユネスコの世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部であり、西国三十三所の第一番札所。
その参詣道は熊野古道の一部であり、人気の大門坂を上るコースでもあります。
今回の旅は、電車で奈良の郡山駅から和歌山の那智駅まで。那智駅からは片道約7.4kmのコースを歩くことにします。
旅日記
郡山駅~那智駅
さて、青岸渡寺に向かうべく、電車に乗り込み出発です。青春18きっぷを使っての旅なので、乗れるのは快速と普通列車のみ。乗り継ぎを調べた上で、朝早くの出発です。
まずは5:16 郡山発 難波行きに乗り込みます。
外はまだ真っ暗。電車内から外を写して見るも、車内の反射が写るだけ。列車内に人はあまりいない。
6:10 天王寺発 和歌山行きへ乗り換え。この時間になると、通勤通学の乗客もたくさん。7:10頃に和歌山駅に到着。ここでの待ち時間は53分ほど。
1度改札を出て、近くのコンビニで食料調達。朝食が4時半くらいだったので、この時点で少しお腹がすいています。おにぎりを1つ。そして、しっかりとトイレをしておきます。
これから先の電車の中にもトイレはあるのですが、電車の中のトイレはゆっくり出来ないので、出来るだけ使いたくない。乗り継ぎのタイミングでトイレをしておくことが重要です。
海南行きと御坊行きの電車をパスして待っていると、8時前には紀伊田辺行きの電車がやってきました。2019年3月から投入された、新型の227系です。
8:06 和歌山発 紀伊田辺行きに乗車。この1本前の電車は、学生がたくさん乗っていたのですが、この電車には学生は少ない。しかも、海南駅で乗客の多くは降りてしまいました。ここからがローカル線の旅です。
それにしてもこの新型車両、乗り心地が良い。105系のような、うるささもなく快適ですね。さすが新型。脚元に暖房がないので若干足下が寒いですが、それくらいは仕方がないか。
景色を見ながら、ゆっくりとしていると10時前には紀伊田辺に到着。まず目に入ったのが、113系の電車。これも2020年から227系に置き換えられるようで、これが見納めかも。
こちらの駅でも50分ほどの待ち時間があります。和歌山で購入した、おにぎりの残り2個を食べて、昼食代わりに。
電車を待っているとやってきたのは105系。紀伊田辺から南はまだこの電車が使われるのかな。227系から乗り換えると良くわかる振動。快適ではないかもしれないですが、これもまた楽しさでもあります。
紀伊田辺からは2時間強、この電車で揺られていきます。2016年の自転車日本一周の時にも見た景色を車窓から眺め、あの時の楽しさや苦しさを思い浮かべつつ、やっぱり電車は楽だなぁと。
13時頃に那智駅に到着です。家を出たのが5時くらいですから、約8時間かかってたどり着きました。
列車を降りてホームから駅舎に入ると、自転車日本一周の時に寝たベンチが。懐かしいなぁとしみじみしていると、窓枠に置かれたノートに目が留まりました。
鉄旅好きの旅人が残していったこのノート、私もひとこと書いておきました。
駅舎を出て振り向くと、神社をイメージした駅舎の姿が。今は特急も停まらない無人駅ですが、立派な駅舎でかつての繁栄を思い起こさせます。
青岸渡寺へ
駅舎に隣接する那智駅交流センターにて、青岸渡寺までのガイドマップがないか探すのですが見当たらず。スマホにダウンロードしたガイドマップをたよりに歩くことにします。スマホで見るより紙で見る方がわかりやすいので、あることを期待していたのですが残念。やはりPDFファイルをプリントしておくべきでした。
装備を整え、いざ出発。
スタートしてすぐに補陀洛山寺と熊野三所大神社があるのですが、ここは以前立ち寄っているため、今回は省略します。
車通りの多い車道に沿ってしばらく歩いて行きます。
さすが世界遺産に登録されただけあって、わかりやすく案内されています。所々に昔からの案内もあれば、このように道路にペイントされたものも。
道路脇には川関の庚申さん。石碑には何が彫られているのかよくわからず。
しばらく車道沿いを歩いて、曼荼羅のみちに突入です。
車道を渡るとこんな案内があります。
いよいよ古道らしい道へ突入です。なお、見えている階段は上らずに、奥に進みます。
熊野古道というと、石畳の道を想像していたのですが、こういう山道もあるのですね。
尼将軍供養塔に到着です。登りはここまで、このあとは下りになります。それほど厳しい山道ではありませんでした。
しばらく下ると霊園があって、そこからはこれから向かう市野々の集落が見渡せます。
古道沿いには目を楽しませてくれるものがたくさん。そしていよいよ大門坂に。
ここに来た時に、この坂が大門坂?と思いましたが、これは入り口を示しているだけです。
少し進むと階段があって、橋があって、茶屋があって、そして大門坂。
立派な夫婦杉が出迎えてくれます。樹齢約800年だそうです。
全長約600メートル、高低差約100メートルの石畳の階段が続きます。階段の間隔はまちまちだし、石畳も結構凹凸があって歩きにくい。しかし、これこそが古道なのだなと。現在の整備されすぎた階段に比べ、優しくはない道ですが、いにしえより使われてきた道です。江戸時代の人たちも使ってきた道を、令和の時代に同じように歩く、ふと足を止めた時にタイムスリップしたような感覚になったりもしました。
大門坂を登り切ったと思ったら、次に待っていたのが那智山参道。まだまだ階段は続きます。
途中にあった案内看板。熊野那智大社と青岸渡寺が並ぶようにあります。今回は青岸渡寺が目的地なので、青岸渡寺の山門をくぐりたいなと。
那智大社の鳥居の手前で、青岸渡寺方面に折り返します。
通常は那智大社を参拝してから、青岸渡寺というパターンですが、鳥居はくぐらず。
こちらが青岸渡寺の山門です。那智駅からここへ来るまで約2時間、ついに到着です。しかし、こちらの階段を上っている途中で、那智大社の方から騒がしい声が聞こえてきました。少し嫌な予感。
そして青岸渡寺の本堂。1590年豊臣秀吉により再建された、桃山時代の特徴を色濃く残す、西国三十三所巡り1番札所にふさわしい建物です。
まずは1枚写真を撮って、それからお参りをします。しかしお参りをしている途中に、アジア系の団体客がやってきました。本堂内に大量の人が溢れ、ゆっくりと本堂内を見ていることが出来ない状態に。とりあえず本堂内にあった納経所で、御朱印をいただき1度外に出て、団体客が去るのを待ちます。
団体客が去ってから、本堂内をもう一度ゆっくりと見て回ることに。ご本尊は如意輪観世音像ですが、秘仏ということで見ることが出来ません。前立ちの如意輪観音座像が安置されているのですが、こちらは小さくてよく見えず。こういったときのために今回は単眼鏡を持ってきてはいるのですが、こちらを使ってもよくわかりませんでした。
本堂内には、役行者とびんずるさまがあったので、こちらもしっかりとお参りしました。
目的の青岸渡寺へのお参りは済んだので、あとは観光コースをたどります。まずは熊野那智大社。
定番の三重塔と那智の滝。
那智の滝をしっかりと見るために、少し下って飛龍神社へ。
そういえば那智大社や那智の滝には、20年ほど前に来たはずなのですが、あの時はここまで滝に近づかなかったかな。さすが日本一の落差の滝、勇壮であります。
さて、観光を終えた後は帰るのみ。那智駅に向かうべく、大門坂を歩いて下ります。本当は那智駅まで歩いて帰ろうとも考えていたのですが、大門坂を下っていると、足が痛くなってきました。やはり下りは足に来るようです。
大門坂を下り終えたところの大門坂駐車場からは、バスに乗ることに。2時間かかって歩いてきた道のりも、バスを使えばあっという間に到着です。
那智駅に無事戻ってきました。世界遺産情報センターのポスターは、よく見ると大門坂を上っている風景なのですね。この格好で上るのはキツそう。
那智駅~郡山駅
那智駅に戻ってきたのは、16時半すぎ。紀伊田辺行きの電車が来るまで、約1時間くらい。紀伊田辺でおにぎりを食べてから、シリアルバーを1本食べただけで、お腹がすいてきました。
近くにコンビニがあるので、そこで何か買おうと歩いて行くことに。残念ながらイートインの施設はなかったので、とりあえずおにぎりとファミチキを購入。駅舎で食べようと。
那智駅に戻るのと、隣の紀伊天満駅までの距離がそれほど変わりがなかったので、紀伊天満駅まで歩くことに。
小さな駅舎の紀伊天満駅。こちらの待合所で夕食を食す。
ここからまたひたすら電車の旅です。来た時よりは乗り継ぎが良いので、8時間はかからずに家に帰れそうです。
17:28 紀伊天満発 紀伊田辺行きに乗車。乗客は少なく、紀伊田辺についた時の客数は5人ほど。紀伊田辺で40分ほど待ちます。折り返しの電車が出発の20分くらい前に来たので、車内でゆっくり。
20:39 紀伊田辺発 和歌山行きに乗車。先ほどとは違い、乗客は和歌山に近づくほど増えていきます。仕事帰りの人が多いのでしょう。みんな遅くまで働いているのですね。
22:31 和歌山発 天王寺行き普通列車に乗車。日根野で快速列車に乗り換え。関空から来るこの電車は、海外帰りの大きい荷物を持った人がたくさん。
23:48 天王寺発 加茂行き快速列車に。これが本日乗る最後の電車。
日付が変わって、0:18 郡山駅に到着。長い旅は終了しました。
朝5:16の出発から、0:18の到着まで、19時間の旅でした。そのうち那智にいたのが、13時から17時半くらいまでの4時間半くらいですから、14時間くらいは電車もしくはホームにいたわけです。
我ながらよくやったなぁと思いながら、コンビニで夜食を買って、家に帰りました。
御朱印
今回の西国三十三所巡りに際して、納経帳を用意しました。
四国遍路の時と同じく、専用の納経帳です。
現在、西国三十三所霊場では、草創1300年記念の「特別印」を押していただけます。青岸渡寺では、左上に押された三重塔と那智の滝がデザインされた印です。2017年から始まった記念印ですが、2020年12月18日までとなっています。