さて、今回は旅する自転車ランドナーについてです。
昨日のこちらの記事
この中で自転車旅を終えた方が、ランドナーをおすすめしているブログを、批判的な形で紹介しました。いわく、ランドナーという自転車のこともよくわかっていないと。
実はスポーツ自転車の中で、このランドナーというジャンルが一番厄介なジャンルだと思っています。多くの方がランドナーという言葉を使うのですが、人によって定義が違うからです。今回は私なりに、ランドナーの定義を考えていきます。
この記事を書くにあたり、細心の注意をはらい書いておりますが、文中に誤りがある場合は、コメントやメールで指摘してください。訂正します。
ランドナーとは
とりあえずwikipediaで調べてみます。
ランドナー(フランス語: Randonneur、Randonneuse、ランドヌーズ)は、フランス発祥のツーリング用自転車。フランス語の「ランドネ」(小旅行)に由来する。日本では日帰りから2-3泊程度の旅行向けの用途で使われることが多く、一般にサイクリング車とも呼ばれる。使う機材がほかの自転車に比べて保守的であるといわれる。
出典:Wikipedia
ランドナーはフランス語を語源とした、ツーリング用自転車ということです。(ここで重要なのが小旅行とか保守的という言葉が使われているところです。)
という事で言葉だけでいうと、ランドナー=旅用自転車=ツーリング自転車です。
グレートジャーニーはランドナー?
日本一周用おすすめ自転車でも紹介した、GIANTのグレートジャーニーをランドナーと紹介しているのを見かけることがあります。この場合はツーリング自転車という意味で使っているのかと。
しかし、年配の方を中心に多くの方が、この使われ方には違和感を抱くと思います。私もグレートジャーニーをランドナーと呼ぶのには、すごく違和感があります。なので、私の場合は、グレジャニはツーリング車と呼んでいます。
なぜ違和感があるのかというと、デュアルコントロールレバーであったり、アルミフレームであったりと、現代的だからです。例え、旅用自転車と言葉上は同じだとしても、見た目として許せないわけです。
ランドナーとはどんな自転車?
で、どういうのがランドナーかと問われたら、一般的にすぐに思い浮かべる特徴が、ドロップハンドル、細身の鉄フレーム、Wレバー、泥除けだと思われます。
多分、この4つの要素を持つ自転車を見た場合に、ランドナーと思う方が多いと思います。また、そこには70年代~80年代に流行った、懐かしい自転車という意味も含まれているかと。
さてここで難しい問題?が発生します。先にあげた4つの要素を持つ自転車が、もう一つあります。それがスポルティーフと呼ばれる自転車です。
ランドナーとスポルティーフ
ここで前回紹介した自称”敷居の低い”スポーツサイクル専門店「きゅうべえsports」のホームページから、それぞれの特徴を引用したいと思います。
ランドナーとは、フランス発祥のツーリング用自転車で、戦後、日本に紹介された。比較的太めのタイヤを装備し、舗装路~砂利道程度のオフロードまで、幅広いフィールドを快適に走行できる。また、峠道の多い日本の地形に対応できる幅広いギヤ比の変速機も装備し、荷物を積んでのんびりと走行できるように直進安定性を重視した設計となっている。また、輪行を念頭において、分割式の泥除けや着脱の容易なフロントフォークなどコンパクトに分解できるものもあります。
出典:きゅうべえsports「ランドナーの特徴・選び方」より
スポルティーフとは、ロードバイクと同じ700cホイールを採用した快走ツーリングバイクです。ランドナーよりも速い速度域での走行に向いており、25~28cの細めのタイヤを採用している。基本的には小さなフロントキャリアを装備し、フロントバッグのみで、サイドバッグなどの大きな荷物には対応していない。そういった意味ではツーリングバイクというよりもロードバイクに分類しても良いといえる面がある。ランドナー同様にトラディショナルな様式美を追求する楽しさもある。
出典:きゅうべえsports「スポルティーフの特徴・選び方」より
「きゅうべえsports」のホームページには、さらにわかりやすく写真に合わせて、ハンドル・フレーム・ギヤチェンジ・タイヤの4つの要素で解説してくれております。興味のある方は、是非訪れてみてください。
読んでいただければわかるように、ランドナーとスポルティーフの違いは、主にタイヤと荷物の積載量であることです。個人的にはブレーキがカンチかキャリパーかの違いを入れてもよいかとも。
これをわかっていない人が日本一周用おすすめ自転車の記事を書くと、多量の荷物を積めることが重要だと書きつつ、スポルティーフをおすすめに入れてしまうわけです。
フレームにダボ穴があればキャリアを付けて積めなくはないですが、タイヤが細いので多量の荷物を載せると安定性に問題が出てきます。スポルティーフは多量の荷物の積載を前提としていないかと。
スポルティーフの説明の最後に、さり気なく”ランドナー同様にトラディショナルな様式美を
追求する楽しさもある。”と書かれております。ここが重要です。
ランドナーもスポルティーフも様式美の世界でもあるのです。これは昔ながらのスタイルを守り続けているからなのですが、逆にややこしいことも発生します。
ランドナーとはどんな自転車?
もう一度もどってランドナーってどういう自転車?と聞かれた場合、ドロップハンドル、細身の鉄フレーム、Wレバー、泥除け、カンチブレーキ、26インチのタイヤ(650A・650B)、前後キャリアが取り付けられる自転車と答えれば、スポルティーフとの区別ができるかと。
これが一番、一般的なランドナーの定義と言ってよいかと思います。
アラヤのフェデラルはランドナー?
それでは、ドロップハンドル、細身の鉄フレーム、Wレバー、泥除け、26インチ(650A)のタイヤ、カンチブレーキ、前後キャリアが取り付けられる、アラヤのフェデラルはランドナーと言って良いのでしょうか。
ブログ村自転車日本一周カテゴリーにも登録されている、自転車生活課ゆう-(資)廣瀬商会という長崎の自転車店のブログにこんな記事があります。
こちらの自転車店はフェデラルをランドナーと言っております。ランドナーの特徴をあげた最後に、
近年、ランドナーも、多様化しています。
全ての条件がそろってないとランドナーではない!というわけではありませんよ~(;´Д`)(日本特有の呼び名らしい…)スポルティフ(スポーツバイクよりのランドナー)というジャンルに分ける場合もありますし。。。
その時代の流行り、利便性などで、使用されるパーツも変わってきているようです。
出典:自転車生活課ゆう「ロードバイクとの違いは?ランドナーってなに?」より
最後にランドナーが多様化していると、述べております。で、フェデラルを作っているアラヤはというと、
フェデラルを「ランドナーの豪華な仕様を簡素にまとめ、サイクリングのための自転車として」、サイクリング車とカテゴライズしております。
そして、アラヤはツーリストというどう見てもランドナーに見える自転車をも、ランドナーと呼んでいません。アラヤがランドナーと呼んでいるのは、スワローランドナーのみです。販売店とメーカーで、認識が違っているということです。
私から言わせると、自転車生活課ゆうはわかっていない販売店で、アラヤはわかっているメーカーです。
狭義のランドナー
ランドナーの歴史は戦後フランスから持ち込まれたルネ・エルスという自転車から始まっております。その自転車をお手本にして作られ、発展してきたわけであります。
まぁ、くわしくは私もわからないですが、長い歴史があるわけです。そして、その中で作られてきた伝統的なスタイルがあります。
ラ系と呼ばれる熱狂的なランドナーファン(マニア)もいて、その人達にとってランドナーとは、かくあるべしという形があります。すなわち様式美です。
いわく、フレームはホリゾンタルフレームでなければならない。
いわく、フロントキャリアがなければならない。
いわく、ブレーキケーブルは上出しでなければならない。
いわく、ヘッドパーツは輪行ヘッドでなければならない。
いわく、サドルは革製でなければならない。
いわく、ハンドルバーはランドナーバーでなければならない。
いわく、泥除けは分割式でなければならない。
いわく、タイヤは650Aもしくは650Bでなければならない。できれば650Bがよい。
いわく、クランクやディレイラー、ブレーキなどのパーツはフランス製のパーツがよい。
いわく、前後にキャリアを付けたものは、キャンピングであり、ランドナーではない。
多分、こんな感じです。(実際に言っているわけではなくて、ランドナーを扱っている本を見ると、こういう主張が感じられるということです。)ちなみにブレーキケーブル上出しや分割式泥除け、輪行ヘッドに関しては、ヘッド抜き輪行を行うために、必要だからです。
また、タイヤに関して650Bのタイヤは入手性が悪くなり、26インチHEランドナーも作られるようになりました。最近はMTBの世界で27.5インチタイヤが普及し始めたため、同じリム径を持つ、650Bタイヤが復活し始めております。なので、スワローランドナーは650Bタイヤになったのです。
フランス製のパーツもメーカー(ユーレーやサンプレックス)がなくなり、入手しにくくなったため、できるだけ違和感のないパーツを使っていたりします。
全部は無理としても、これらの条件をある程度クリアしたら、晴れてランドナーと呼んでも文句は出ないと思います。これが狭義のランドナーです。
アラヤはこういう人達がいるとわかっているからこそ、スワローランドナー以外を、ランドナーと呼んでいないのではないかと思うのです。なお、スワローランドナーは分割式泥除けとフランス製パーツ以外を、クリアしてます。ちなみにフェデラルは、ヘッドパーツが輪行ヘッドであることくらいしか、クリアしておりません。
ツーリストは結構クリアしているので、ランドナーと呼んでもよいのではと思います。アラヤはスワローと差をつけるために呼ばないのか、使われている部品によって、ランドナーと呼ぶのをためらっているのか、よくわかりません。
最後に、京都にあるランドナー専門店、アイズバイシクルのブランド「グランボア」の紹介を。
このお店の記事を読むと、ランドナーの深い世界が垣間見えるかと。
ランドナーの本もたくさん出ておりますが、レビューを読むとランドナーの捉え方により、様々な意見があるのが読み取れます。
まとめ
ランドナーには、3つの定義があるということです。
2.一般的な意味でのランドナー ドロップハンドル、細身の鉄フレーム、Wレバー、泥除け、26インチのタイヤ、カンチブレーキ、前後キャリアが取り付られる自転車
3.狭義のランドナー 2の条件をクリアした上で、さらに様々な様式美を満たした自転車
人によって定義が違っているので、同じランドナーといっても、話が通じなかったりします。まぁ、厄介な自転車のジャンルと言えるのです。
ではでは。
コメント
私はミヤタのアイガー(安い方)に乗っています、スワローランドナーは10速であるところがランドナーらしくないと思ったので。
吊るしじゃダメっ子なので、手を入れてますが…。
名前や枠組みに捕らわれる必要はないと私は考えていますが、フォーク抜きスタイルの輪行を実際にする人の自転車なら何であれランドナーと言えるのだと思います。
>ぶたぶた様
コメントありがとうございます。
ランドナーに関しては、こだわる人とそうで無い人の差が大きいといいましょうか。
私は色々な捉え方があって良いと思ってます。