さて、久しぶりの奈良県大和郡山市のオススメを紹介する、【わが町】シリーズ第3回目。今回は今も中世の面影を残す、環濠集落の紹介です。
環濠集落とは
環濠集落(かんごうしゅうらく)とは、周囲に堀をめぐらせた集落(ムラ)のこと。水稲農耕とともに大陸からもたらされた新しい集落の境界施設と考えられている。~Wikipediaより
簡単にいうと、堀に囲まれた集落のこと。吉野ケ里遺跡に見られる弥生時代のものと、奈良盆地に見られる中世のものがあります。今回紹介するのは、奈良盆地に残る中世(南北朝〜室町時代)のものです。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によると、
近畿地方、とくに奈良盆地を中心にみられる特殊な集落形態で、幅4~5メートルの濠(ほり)(堀)を人為的に掘り巡らした集落。城壁と外堀を巡らした一般の城砦(じょうさい)都市をさすのではない。その起源は明らかでないが、中世の社会不安の時代に、村落民が自衛のために堀を掘って村落を防御した名残(なごり)とされている。しかし、奈良盆地の村落の環濠は、条里の溝渠(こうきょ)に基づいて、それを中世に拡大したものもあるとすれば、古代にまで起源をさかのぼることも考えられる。また、奈良盆地は夏には降雨が比較的少なく、水不足が生じやすかったので、環濠に灌漑(かんがい)水を蓄えて利用したことも、奈良盆地に環濠集落が残存した一因ともいえる。[織田武雄]
奈良盆地にたくさん残る環濠集落ですが、堀を埋め立てられたところもおおく、当時の姿のまま残っているところは多くありません。今回訪れた稗田環壕集落は、かつての環濠の姿をとどめる奈良盆地を代表する環濠集落です。
稗田環壕集落を歩く
11月下旬の、とある晴れた日に、稗田環壕集落を訪れてみました。
稗田環壕集落まで、JR郡山駅からは歩いて20分ほど。近年は道も整備されて、訪れやすくなっております。車で訪れる場合は、売太神社(めたじんじゃ)の駐車場を利用すると良いでしょう。
まずは濠の南西の部分に到着。
広めの濠があります。濠沿いを歩いて、まずは売太神社へ向かいます。
売太神社は古事記の編纂に関わった、稗田阿礼(ひえだ の あれ)を祀る神社です。
稗田阿礼は記憶力に優れていたため、天武天皇の時代、歴代天皇の実績や歴史・神話・伝統の誦習(書物などを繰り返し読むこと。また、読んでおぼえること。)を命ぜられた。そして、元明天皇の代、阿礼の誦するところを、太安万侶が筆録したのが、古事記なのです。
私の大好きな漫画、諸星大二郎「妖怪ハンター」の主人公、稗田礼二郎の名は、この稗田阿礼から。
わりとこじんまりとした神社です。この後は環濠に沿って歩いてみます。
東側の濠は、それほど整備されず、昔のままといった風景。
北東側は、七曲りとよばれる特異な形とのことで、うねうねしています。
集落の中央を南北に走る道路を境に、西側はきれいに整備されています。標識は昔のままですが。
ぐるりと一周歩いてきました。特別にこれといった見どころはありませんが、昔ながらの面影を少し感じたりします。
続いて集落の中を歩いてみます。
メインの通りから外れると、軽自動車がやっと通れるくらいの道と、小さな路地ばかり。一直線に見渡せる道はなくて、城下町と同じように、鉤形の道になってます。
行き止まりの道も多くて、まるで迷路のようでした。特別な観光ポイントのない、いわば住宅街なのですが、存在自体が面白いなと思うのでした。
若槻環壕集落を歩く
稗田環壕集落はこれくらいにして、次に若槻環壕集落へ向かいます。稗田からはそれほど離れておらず、10分ほどで到着です。
こちらはGoogleの航空写真ではわかりづらいのですが、マップで見るとよくわかります。
西側ははっきりと濠が残るのですが、南側は建物に挟まれていて、わかりづらくなっているのです。南北を貫くメイン通路を、北側から入りました。
西融寺の向かい側に、案内看板がありました。環濠集落が形成されたのが室町時代で、環濠がつくられた時期が特定できるので、全国的にも有名とのこと。
規模は稗田に比べると小さい。また、濠の周囲を歩くこともできないので、集落の中を歩きます。
まずは天満神社に行ってみました。鳥居がなくて、ちょっと神社っぽくない。
これが濠のようで、埋められてしまったのでしょうか。濠でなくて、溝ですね。
路地を歩くのは楽しい。海沿いの町の狭い路地とも、また違った印象。
集落の西側、天満神社の外側は濠が残っていました。
この後はまた集落内に戻ります。
やはり鉤形の道があります。
最後に北側の濠を見て終わりにします。ここもほとんど溝ですね。
まとめ
稗田と若槻の環濠集落を見て思ったのが、昔ながらの町の形が残っているのが良いなぁと。町はとにかく開発されて、元の姿をなくしてしまっているところが多いと思う。
それは太平洋戦争時の空襲の影響もあるかとは思うのですが、奈良は空襲を免れたため、昔ながらの姿を残しているところが多いのではと。京都は空襲はなかったけど、開発で昔ながらの姿は少なくなっていますし。
昔ながらの風景というと、「となりのトトロ」的な風景ばかり。もしくは、城下町の風景でしょうか。でも、環濠集落は室町時代の姿を残しているとも言えます。
これといった観光ポイントはありませんが、昔ながらの面影を残すこれらの集落を訪れ、室町時代に思いを巡らせてみるのも、面白いかもしれません。
なお、大和郡山にはもう一つ、番条環濠集落があります。こちらはまたの機会に行ってみたいと思ってます。