もし、あなたがある日、自転車で日本一周をしてみたいと思ったとしたら、どのように進めていけば良いのでしょうか? この【自転車日本一周のためのガイド 】では、過去に自転車日本一周をおこなったサイト管理人が、自身の経験を活かして、計画の進め方や準備するものを解説していきます。
第13回目からは実際編、日本一周に出発したあとに直面する問題について考えます。まずは自転車日本一周では避けられないトンネル問題です。
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自転車はトンネルのどこを走るべきか?
自転車の通行を禁止されていないトンネルにおいては、自転車は法律上軽車両なので車道を走るのが原則です。(もちろん逆走は違反ですし、極めて危険なので絶対にしないこと)
しかし、車道の走行が危険な場合は、歩道を走行することを認められています。自転車日本一周には限りませんが、交通量の多いトンネルや長い距離のトンネルは、歩道があるならば安全を第一に考え歩道を走りたいところです。
トンネル怖い
自転車で旅する人のほとんどがトンネルは怖いと言います。それではトンネル内走行の何が怖いのでしょうか? トンネルの怖いところを見ていきます。
道路自体が狭く、圧迫感がある
それまでは広かった道幅がトンネルにさしかかると狭くなります。路肩はもちろん車道自体が狭くなることも多いです。しかもトンネル内は壁に覆われているので圧迫感があります。そして、自転車に逃げ場は無く、横を車が通り抜ける時はかなりの風圧を受けることに。
歩道が無いことも多いですし、歩道があったとしても自転車で走行するには幅が狭いことも。
トンネル建設に費用がかかるためか、(特に古いトンネルは)余裕を持って作られていることは少ないです。そのいちばんの犠牲になっているのが、歩行者と車両の間で立ち位置が微妙な自転車であるといえます。
車のエンジン音が反響する
トンネル内では音が反響するため、車のエンジン音が普段より大きく聞こえます。距離の長いトンネルでも、1台車がいれば、その音は爆音として聞こえてきます。
また、車が自転車に気をつかってか、接近を知らせるために鳴らすクラクションの音のけたたましいこと。
普段普通の道路を走っていると、暴走族でもこない限り音による恐怖を感じることはありません。そういう意味でいうとトンネルならではの恐怖は、この反響する爆音といえるかもしれません。
左端は泥、水、ゴミがたまりやすい
道路は完全に真っ平らに作ると水が流れずにたまってしまうため、道路の中央線あたりがすこし高く作られているようです。そのため水は道路端に寄ってきます。それとともに砂やゴミもいっしょに左端に溜まっていくことに。
自転車で走行していると、色々な物が道路端に落ちているのを見かけます。空き缶や手袋、靴、お菓子のパッケージなどなど、故意に捨てられた物もあれば、荷台などから風で飛んでしまった物あるでしょう。トンネル内ではそれらが道路端に溜まっています。
泥や水でタイヤを取られてスリップする危険性がありますし、空き缶や突起物などを踏んでしまうとパンクの可能性もあります。トンネル内でスリップやパンクが原因で転倒、なんて考えるだけでも恐ろしいものです。
歩道にも危険が一杯
最初の方で「交通量の多いトンネルや長い距離のトンネルは、歩道があるならば安全を第一に考え、歩道を走りたい」と書いたのですが、実は歩道にも危険が一杯です。
狭い歩道
トンネル内の歩道は本当に様々で歩行者や自転車の通行を考えた歩道から、道路を管理する人のための道(監査廊)もあります。狭い歩道の場合、自転車の走行は逆に危険です。
写真にあるトンネル内の歩道を見ていただければわかるように、手前の自転車が走行するには幅が狭く、しかも高さがあります。荷物満載の自転車の場合、荷物が壁面に接触して車道側に転倒なんてことも考えられるわけです。この場合はそもそも自転車の走行を考えられていない歩道と思われますので、ここを走るのは避けたほうが良いということになります。
自転車にとってはこの自転車が走れない狭い歩道があるゆえに、車道が狭くなり車道を走りづらくなっている面もあります。写真のトンネルの場合、この高くなった歩道が無ければ路側帯は広くて、自転車にとっては走りやすいトンネルになると思うのですが。
急に狭くなる歩道
これはトラップといいましょうか、トンネル入り口の歩道部分はそれなりの幅があるのですが、途中で歩道の幅が狭くなるということです。何故こんなことになっているのか理解が出来ません。
歩道の走行をあきらめて車道へ移動することになりますが、この場合も歩道には高さがありますので、荷物満載の自転車を車道に降ろすのも危険が伴います。車の流れが途切れるのを待って、自身は歩道側に立って、自転車を車道に降ろしましょう。
側溝のフタ(グレーチング、鉄板)
歩道に限らず車道にある場合もありますが、トンネル内の水を処理するために側溝があり、それを覆う金属製の蓋があるわけです。グレーチングと呼ばれる穴の開いた蓋の場合もありますし、ただの鉄板が横たわっている場合もあります。これがくせ者です。金属で出来ているので水に濡れていると滑りやすいですし、溝や段差にタイヤが取られることもありえます。
これが無いとトンネル内に水が溜まってこれまた走りづらいですし、あればあったで危険というやっかいなものです。
ガードレール
交通量の多い都市部のトンネルに多いのですが、歩道から人がはみ出さないようにガードレールが設置されている場合があります。それなりに広い歩道であれば良いのですが、荷物満載の自転車にとって狭い歩道の場合はこれがあだとなることがあります。自転車や歩行者とすれ違えないのです。
ガードレールが無ければ車道側に避けられるのですが、それも出来ず。対面から人がくることにおびえながら走行することになります。
なお、小樽-札幌間のトンネルで歩道を走っていたところ、事故のためかガードレールが歩道側にひん曲がっていて、歩道の幅が極端に狭くなっていることがありました。自転車から降り自転車を持ち上げるなどして、なんとか通行できましたが、ガードレールがある場合、こんなことも有り得るわけです。
歩道に上がれない
一般的に歩道は車道から少し高く(25cm)作られています。
写真のようにトンネル内にだけ歩道がある場合、自転車ではそのまま歩道に上がれません。いったん自転車を降りて、荷物満載の自転車を持ち上げないといけません。
トンネル内にしっかりした広い歩道があっても、車道から歩道へ簡単に移動できない場合があるわけです。こうなると歩道を走るよりそのまま車道を走ったほうが楽ということになり、車側からは「歩道があるのだから、歩道走れ」といわれることになります。トンネル手前から歩道があったとしても、車道から歩道へ上がれない場合もあります。
トンネル内走行の対応
トンネルが怖いのはわかっていただけたでしょうか。トンネル内には、上に書いた要素が通常ひとつだけでなく、複数組み合わさって存在しています。
暗くて狭くて歩道も無く、車の爆音は響き渡り、自転車が走るべく左側には、水が溜まり泥やゴミがいたるところで見られる。こんなトンネルも実際にありました。それにくわえて上り坂になっていたら、もう嫌になってしまいます。
それではこれらの恐怖のトンネルをどうやって走行していけば良いのかです。
トンネルを避ける
トンネルが怖いなら、そこを走らなければ良いという考え方があります。昔からの峠道があったところに、車の利便性を考えてトンネルが作られている場合は、旧道を走ればトンネルを避けることが出来ます。
必ずトンネルを避ける道があるわけでもないし、旧道が廃れてしまって走行できない場合などもあります。どうしてもトンネルを避けたい場合は、google mapのストリートビューで歩道の有無や回避できる旧道を探すのも良いでしょう。
奈良県の新笠木トンネルと新川合トンネルの場合
上は奈良県の西吉野町にある国道309号線の、新笠木トンネル(1,693m)と新川合トンネル(2,751m)です。トンネル内でカーブのある、あわせて4kmを超える怖いトンネルですが、荷物満載の自転車が走れる歩道はありません。自転車日本一周でここを走る人はほぼいませんが、こんなところを自転車が走るはずが無いといった考えの、こういった例は日本全国でありえます。

新笠木トンネル北側入り口

新川合トンネル北側入り口
この場合、トンネルを避けるべく点線で示した旧道を走る方法があります。ただし、峠越えになるので、それなりの覚悟が必要になります。
北海道小平町のトンネルの場合
もうひとつは海沿いによくあるパターンのトンネルです。海沿いに道路はあるものの、利便性を考えて山を突っ切るトンネルが作られているパターンです。トンネルを避けても峠越えは無く、車の通行も少ないので気持ちよく走れることが多いです。
なお、ここのトンネルは広い歩道があるので、自転車でも問題なく走れます。私は地図だけ見て、迂回路を選択したのですが、ストリートビューで確認していればこちらを走ったかもしれません。ただ、トンネル内は少し上りになるようなので、迂回したほうが気持ちよく走れると思います。
歩道を走る

広島県呉市にある休山トンネル、車道と歩道の間に仕切りがある
これが一番現実的なトンネルを安全に走る方法になるでしょう。そもそも歩道が無かったり、歩道が狭かったり、歩道が対向車線側にしか無かったり、歩道にあがるのに自転車を持ち上げないといけなかったりと、なんじゃこりゃとなる場合も多いですが、交通量の多いトンネルで自転車が走れる歩道があれば、積極的に利用したいものです。
存在を知らせる
トンネル内を走行する場合は、点滅するリアライトなどをつけて、自身の存在をアピールする必要があります。これは車が自転車の存在を見落とすのを防ぐためです。自転車の装備としてママチャリなどでは、反射器材(後方反射板)がついていますが、それだけでは不十分といえます。
リアライトを点灯していても、トンネル壁面の赤ランプと勘違いするなどともいわれているので、赤色の点滅するランプを取り付けたほうが良いでしょう。また、荷物満載の自転車の場合は、積んでいる荷物の幅がわかるようにサイドバックにも反射材が使われているものがオススメです。
ただし、トンネル内を無灯火で走る車の場合、リアライトや反射器材をつけていても見落とされることもありえます(後述します)。
自転車を押す
最終手段としては、自転車を降りて押すことになります。歩道も無い狭く上りのトンネルで、トラックの通行が多い場合、自転車がフラつくようであれば下りて押すほうが安全です。ただし、距離の長いトンネルの場合はかなりつらいでしょう。
私のトンネル走行方法
自転車日本一周を終えた後は、危険を感じながらもそれほど怖いと思わないようになりました。感覚が麻痺したのかもしれません。自分なりのトンネル内走行方が確立され、自身が注意できることはすべてしてるつもりです。もしこれで事故にあうなら、もうどうしようもないという諦めもあります。
- 安全に走ることの出来る歩道があれば歩道を走る。対向車線側にある場合でも、そちらに移動する。
- 爆音はそれほど気にしない。トンネル内に自動車が存在することのみを認識し、迫ってくるかの判断は音を最重視しない。
- 車の接近は車のヘッドライトがつくる自身の陰で判断する。トンネルの照明との違いを認識、無灯火の車がいることも想定する。
- 交通量の少ないトンネルの場合は、過度に左端に寄りすぎない。白線の上から少し右側を走るイメージで。
- 後ろから車がくることがわかったら後ろを振り向き、車の存在をわかっていることをアピール。
- 自動車にうまく抜いてもらうために、車が接近してきたらやや左による。対向車の存在を意識する。対向車がいないと追い越してくる、いると追い越してこない場合も。また、ギリギリ横を追い越してくる場合もありえると認識。
- センターラインに道路鋲(反射するやつです)がある場合、それを踏みたくないがため、自転車ギリギリで追い越してくる車がいると想定する。
以上のようなことを考えて、トンネル内を走行しています。最終的には慣れの部分もありますが、トンネル内は普通の道路と比べて危険であることは確かです。注意しつつも、過度の恐れを持ちすぎないようにしています。
どれだけ対応しても無駄?
過去の事故の例から考えると、いくら対策したところで事故にあう時は事故にあいます。これはトンネル内に限らず、道路を走行する以上避けて通れないことです。過去の事故の例をふたつ。
2019年末、和歌山県由良トンネルの事故
2019年末に和歌山県の国道42号線、由良トンネルの出口近くで起こった追突事故の被害者が事故を検証している記事です。

自転車側の装備や走行に全く問題なく、車側の問題(無灯火・不注意)が大きいです。自転車側がどれだけ注意をしていても防ぐことは出来ません。
2019年7月、滋賀県坂下トンネルの事故
2019年7月28日、滋賀県の国道367号線にある坂下トンネルで、走行中のロードバイク9台に対向から来た自動車が突っ込み、関連する7人が重軽傷を負った事故です。

続報が無くて事故の原因は特定できませんが、どんなに注意を払って走行していたとしても、対向車線から車が突っ込んできたらどうしようもありません。ただ、これはトンネル内に限ったことではありません。
まとめ
トンネル内を自転車で走るのは、怖いのは本当です。原因としては、車の爆音や風圧、道路端に溜まる泥や水、ゴミなど。自転車が走ることの出来る歩道があれば良いのですが、歩道が無い場合も多いです。また、仮に歩道が走れたとしても注意が必要です。グレーチングや鉄板、泥、水、ゴミ、ガードレールが通行を邪魔することもありますし、トラップのような作りの歩道も多いのが現状です。
トンネルが怖い場合は、トンネルを避けるのも方法のひとつ。地図をチェック。トンネル内を走る場合は、自身の存在をアピールすべくリアライトは必ず装備。そして、走行が危険と感じたなら、自転車を押すことも考えましょう。
しかし、どんなに自転車が注意を払ったところで、事故は起こりえます。これはトンネルに限らず道路上を走っていれば、かならず存在するリスクです。注意しつつも、過度の恐れを持ちすぎないようにするのが良いと私は考えます。
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この記事を書いた人の自転車旅遍歴
この記事を書いたサイト管理人の自転車旅遍歴です。
2009年、自転車で初めての100km越え。

2010年、自転車で四国一周10日間の旅。
2016年、自転車で日本一周。

2019年6月、自転車で北海道旅(途中で、打ち切り)

2019年10月、自転車四国遍路旅

自身での旅にくわえて、自転車日本一周ブログが大好き。たくさんのブログを読んで、自転車旅の知識を補強しています。過去の自転車日本一周ブログのリンク集も作ってますので、そちらも参考にしてください。

40歳くらいで自転車に目覚めて約11年。現在は腰痛で苦しんでいます。今後、自転車旅は難しいかなと思いつつ、自転車旅に思いをはせてこの記事を書いています。