【90年代単巻ラノベを読む】『タイム・リープ あしたはきのう(高畑 京一郎)』を読んで【読書メモ】

さて、今回もラノベの感想です。個人的にオールタイムベストラノベの1作として挙げたい作品、高畑京一郎「タイム・リープ あしたはきのう」です。

過去に持っていた本ですが、断捨離で処分してしまいました。しかし最近ブックオフめぐりをしていると、各110円で揃って売られているのを見つけ思わず買ってしまった次第です。名作の誉れ高い作品で、今さら感想を書くのもなんですが、読書記録という意味で書き残したいと思います。

タイム・リープ あしたはきのう

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著者:高畑 京一郎
イラスト:衣谷 遊
文庫:電撃文庫
出版社:メディアワークス
発売日:1997/1

鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。“あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい…”若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香の記憶を分析する。そして、彼が導き出したのは、謎めいた時間移動現象であった。“タイム・リープ―今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない…”第1回電撃ゲーム小説大賞で「金賞」を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。

初出は95年に発売された単行本ですが、文庫化に際し分冊されました。電子書籍はこの文庫版を元にしています。

文庫版下巻には、「あとがきがわりに」として短編が収録されています。「タイム・リープ」の実質的主人公 若松の話ですが、物語に直接関係はなく、何か含みを持たせつつも内輪受けなのか全くもって意味不明です。90年代的なおふざけなのでしょう。

読んだ感想

ジュブナイルSFとして、筒井康隆の「時をかける少女」という名作があります。小説よりも原田知世主演の映画版の方が有名かもしれませんし、最近では原作とは内容の違うアニメ版「時をかける少女」の方が知っている人は多いかもしれません。”タイムリープ”の意味を調べると、英語でTime Leapで日本語に直訳すると「時間跳躍」、 和製英語で「時をかける少女」で登場した造語とのこと(Wikipediaによる)。改めて調べるまで、時かけ発の言葉とは知りませんでした。

作品中ではタイムトラベルと区別するためタイムリープと呼んでいるのですが、あえて「タイムリープ」という言葉が使われているのは、「時をかける少女」へのオマージュなのかもしれません。私としては意図的でない時間移動はタイムスリップのほうが馴染みがあるのですが。

で、内容はタイトル通り時間跳躍を繰り返す話です。時間移動ものとしては、過去に戻ってトラブルなどが起こり、それが未来を変えてしまうかも的な物語が定番ではありますが、この作品はちょっと違います。(結果的ではありますが)1週間の中で、行ったり来たり何度もタイムリープを繰り返すのです。それも階段から落ちるなどの、ちょっとしたショックでタイムリープを繰り返します。ただし、同じ時間に行くことはありません。ここがミソです。

主人公の少女は階段からよく落ちるなど、今でいうドジっ子。そして、このタイムリープの謎を解くのが校内トップクラスの秀才少年。少女が頻繁に時間を移動するのに対して、通常の時間の流れにおいて、この謎に迫っていくわけです。この少女と少年のやりとりが1つの魅力で、これぞ青春!って感じです。

そして、始まった当初は主人公と同じくわからないことだらけですが、読み進めていくと途切れていた時間が埋まっていく、この爽快感。あらすじに時間パズルと書かれていますが、まさしくジグソーパズルのピースひとつひとつを埋めていくような感覚です。

最終的にタイムリープを繰り返す原因を突き止めることになるのですが、このあたりはミステリー感覚で読めます。学園恋愛もの、SF、ミステリー、様々なジャンルを飲み込んで、うまく消化した極上の味わいといえます。まさしく名作です。

初出は95年で当時はファンタジー小説の全盛期。電撃文庫で最初から販売されたわけではなく、単行本で発売されたことを考えると、当時からライトノベル(この言葉は当時一般的ではなかったかもしれませんが、今でいうジャンルとしてのです)の流れとは違うものとして、販売側からも認識されていたのかもしれません。

ライトノベルというよりは、ジュブナイルSFと呼ぶ方がしっくりとくる作品です。今となってはシンプルすぎて物足りなく思えるかもしれませんが、読んで損のないライトノベルの歴史の中の1冊だと思います。

なお、感想を書くにあたってamazonのレビューを読んでいたのですが、面白いレビューがふたつありました。「恐るべきもの,女子高生の無意識」と「文庫版下巻の目次に目を通さないように」です。両方とも面白い考察ですが、「女子高生の無意識」の視点にはやられました。同じ本を読んでも、すごいことを思いつく人もいるのだなぁと。

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