【90年代単巻ラノベを読む】『電脳羊倶楽部(小林めぐみ)』を読んで【読書メモ】

さて、久しぶりのブログですが、今回は【90年代単巻ラノベを読む】です。1997年に出版された小林めぐみの「電脳羊倶楽部」です。

小林めぐみ

1990年、富士見書房が主催する第2回ファンタジア長編小説大賞で「ねこたま」が準入選となり、小説家デビュー。デビュー後はファンタジー小説を書いていましたが、2000年以降のSF作品で評価が高いようです。

SFコメディ短編集「食卓にビールを」シリーズは、星雲賞短編部門に3度ノミネート。2003年、「宇宙生命図鑑 – book of cosmos」で第2回センス・オブ・ジェンダー賞大賞を受賞。

電脳羊倶楽部

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著者:小林めぐみ
イラスト:かのえゆうし
文庫:角川文庫スニーカー文庫
出版社:角川書店
発売日:1997/9

阿川千珈は情報処理の授業中、突然クラスメートの坂東が倒れるのを目の当たりにする。最近ネットサーフィン中に意識不明になり、やがて死に至る「インターネット昏睡症」なる奇病が流行していた。その晩、千珈は隣室の女子大生リカコのパソコンの画面中で、坂東が羊に追いかけられているのを見つける。そこに飛び込んできた少年・とーるには「夢魔」扱いされ、殺されそうになる始末。ホントにネットには「魔物」が棲むの?手に汗握るヴァーチャル・ファンタジー。

読んだ感想

普通の女子高生が、大人の女性の姿をした夢魔と少年の姿をした精霊とコンビを組んで、インターネットを介して起こる事件を解決する物語。

まず読んで思いだしたのが、東野司「ミルキーピア物語」シリーズ。ネットの世界に意識をダイブインさせて、事件を解決していく物語で、87年から95年まで続いたハヤカワ文庫のSFコメディ小説です。80年中頃、ウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」をきっかけとして流行した、サイバーパンクの流れをくむ電脳小説。

それらに比べると「電脳羊倶楽部」は、それほどSFではありません。ネットの世界をガジェット的に使ったドタバタ活劇といって良いでしょうか。著者があとがきで、「電脳モノでは無い」「基本コンセプトは”ファンタジーを読んで、インターネットの仕組みを勉強しちゃいましょう”」と書いているように、当時のライトノベルらしい現代を舞台にしたファンタジー小説です。

時代的にはWindows95が発売され、パソコン通信からインターネットへと移行し始め、個人がホームページを持つようになった頃です。20年以上前の話なので、今の10代の人たちにはネットの仕組み(1次プロバイダとかディレクトリとか現在では意識されにくい部分)がちょっとわかりづらいかも。

枠組みとしてはちょっと古くさいかもしれませんが、扱っている内容は現在にも通じる話です。現実の世界に馴染めず引きこもる少女がネットにハマる、ネットに流出する個人情報など、根本的な部分では時代が経っても変わっていません。ネットの世界だけで物語が完結するのでは無く、それが現実の世界とつながり、人や物が妖怪化するという部分に、今ひとつ納得ができませんが、それがファンタジーなのでしょう。

一応、シリーズ化できるような設定になっていて、物語としては成立しているモノの、スッキリとした終わり方で無いのが残念。なお、タイトルの「電脳羊倶楽部」は作中にひと言も登場しない。