さて、久々のバヌーシー生活です。DMMバヌーシーの方針変更により情熱が無くなっていたのですが、今週出走する馬がちょっと興味深く、久々に書いてみようと持った次第です。
その馬は3/8の阪神競馬場5Rに出走する、ダブルアンコール。
ダブルアンコール

出典:DMMバヌーシーホームページより
ダブルアンコールは父ディープインパクト、母ドナブリーニで、栗東・池江厩舎所属の馬です。GI 7勝を挙げたジェンティルドンナの全妹とあり、17年セレクトセールにおいて約4億円で取引された超がつくほどの良血馬。もちろんDMMバヌーシーの所有馬です。名付け親は、おニャン子クラブやAKBグループで有名な作詞家の秋元康氏。DMMバヌーシーでの募集価格は、1口46,800円でした。もちろんDMMの2017年産駒の中では1番の高額馬になります。なお、私は出資しておりません。
入厩前の牧場時代から良血馬らしい背中の良さがあり、持っているバネは他馬と比べるのは失礼なくらい抜けているとの評価。その一方で、かなり気性が激しく扱いが大変とも。

上の記事でも書いたのですが、「気持ちが悪い方に向いてしまえば、取り返しのつかないくらいの気性に変化しそう」なんて言われておりました。
池江厩舎に入厩してからも、相変わらずの気性の悪さを見せていたようです。調教動画を見ても、頭を上げたり物見をしたり、暴れるような走りをしています。激しい気性をおさえつつ成長を促し、昨年12/22 阪神6R 2歳新馬 芝1400mに水口騎手で出走することになります。
デビュー戦まで
なんとかデビューすることになった訳ですが、デビュー戦の騎手は水口優也騎手。競馬に詳しい方ならおわかりでしょうが、重賞勝ち鞍もないランキングでいうと下位の騎手です。超良血馬になぜこの騎手? と思われた方も多いでしょう。これにはちょっとした訳がありました。

上の記事でも触れられていますが、この馬のデビューは武豊騎手で考えられていました。競馬に興味が無い方でも知っている、日本のトップジョッキーです。DMMバヌーシーでは、有力馬や話題馬は実績のあるの騎手に依頼するのが常です。当初、デビュー戦は12/14 阪神5R 芝1600mを武豊騎手で出走する予定でした。
そこでレース予定の当週12/11に、武豊騎手が調教に乗りました。この時のコメントが「制御できる感じがなく、止める時も引っ張ったら右のラチに突っ込んでいくなど思っていた以上、聞いていた以上に大変だなと思った」と散々。
調教動画もDMMバヌーシー内で公開されているのですが、走り始めや走り終わり部分がカットされています。通常は馬場に入ったところから映されるのですが、カットされている部分は公開できないくらい酷かったのかもしれません。これを受けて、デビュー予定はいったん白紙になりました。
そして、この馬の調教は池江厩舎所属の水口騎手が乗ることに。普段から馬とのコミュニケーションをとって、癖などを掴んでもらうことにしたようです。
その後「騎手に関してはどの騎手やエージェントの方に相談しても、かなり危険だと思うのでちょっと、、と言われる事が多いのが正直な現状」、「これまでから非常に難しいところを見せているところと、いきなりこの馬に跨り操作するのは非常に難しい」ということで、普段から調教をつけている水口騎手でレースに向かうことになりました。
これらのコメントを見て、超良血馬だけど活躍は無理かも、と思った人も多いはずです。
デビュー戦
デビュー戦は当初の予定から1週ずらして、12/22 阪神6R 2歳新馬 芝1400mに水口騎手で出走することになりました。水口騎手につきっきりで調教に乗ってもらったことで、コントロール面で前進がうかがえたとのこと。
レース当週の12/18の調教では水口騎手を背に、 栗東ニューポリトラックコースを馬なりで、古馬3勝クラスのフォイヤーヴェルクを2.7秒追走して0.1秒先着するという、数字的には圧巻の追い切り。走り始めは頭を上げるなどして、相変わらずの姿を見せていましたが。
調教後の水口騎手は「ゲートは早いと聞いているし、力があることは確信している。 根は素直な馬で、後はレース的にまっすぐ走らせることだけ」というようなことをコメントしています。インタビューしたDMMバヌーシースタッフの粟津氏は最後に「お転婆なので、怪我だけはしないように」と言っているのが印象的で、周囲の人間が1番心配しているところでしょう。
レース当日の本馬場入場では、この馬の気性を考慮し返し馬では走ることはせず、厩務員の方に終始付き添われながらスタート地点へ。
レースでは、ゲートが開くと大きく左側に斜行。抜群の好スタートだったので、他の馬への影響はなく一安心。道中はそのまま先頭で逃げる形に。コーナーで膨らむなど随所に難しさを見せたのですが、なんとか逃げ粘ります。最後の直線では追いかけてきた馬に並ばれ、健闘したものの頭差の2着でした。
レース後、水口優也騎手は「ゲートは予想通り速かったですが、いつもは右にささっていくのに左に出ました。修正のため肩ムチを入れたら力んで暴走ぎみになりましたが、収まってからは物見して進んで行かずこちらから押しました。3コーナーも外に膨れそうで、肩ムチを入れたら内にささり大変でしたが、競馬はできました。まだしっかりとした調教ができていない中でこれはすごいと思います。距離は今日の感じなら1600mは持つと思いました。素晴らしい馬です。」とのコメント。
また、池江泰寿調教師は「水口騎手が非常にうまく乗ってくれました。癖を理解した上で、馬の気持ちに添いながら走らせることができたと思います。レース後に左トモを落鉄していたとのことで、最後もうひと伸びがなかったのはそこもあるかもしれません。テンションや馬体を考え、2、3週間ノーザンファームしがらきに放牧して様子を見て、今日の感じを騎手から聞いて次を考えます。勝たせられず申し訳ありません」と話していました。
個人的にはまともに走るのかなと疑問を抱いていたので、2着という結果にこれはうまくいけば活躍できるのでは?と思いました。
レース後は馬体には問題はないものの、テンションや体のことを考え放牧に出すことに。
2戦目に向けて
放牧先のノーザンファームしがらきでは、馬体回復につとめることに。
2戦目の予定は、当初2月後半の京都開催。ただ京都の馬場が悪く、軽い綺麗な走りをするこの馬には合わない、使った後が心配とのことで、3/8 阪神5R 芝1600を目標に調整していくことに。2/19には帰厩。
2/21 水口 栗CW 良 79.6 65.8 52.4 39.1 12.2 (6) 一杯に追う
アステロイドベルト(3歳未勝利)一杯の内1.3秒追走0.1秒遅れ
2/26 水口 栗P 良 80.8 64.6 50.2 37.1 11.9 (7) 稍一杯追う
3/4 水口 栗CW 良 50.9 37.5 12.1 (8) 直強め
3/4の追い切り後、水口騎手は「まだ緩さを感じますが新馬戦の時に比べてレースに向かう臨戦体制は雲泥の差だと思いますし、馬も少しづつ成長しています。しかしまだまだ幼い面もあるので今回も返し馬はせず担当の方に曳いていただきゲート裏までいき、なるべく体力を消耗しないようにしたいです。レースは枠順次第だと思いますが、スタートしてから抑えて馬とけんかするよりはサラッと行かせたい」とのコメント。
狂気の馬ダブルアンコールの2戦目に注目
3/8 阪神5R 芝1600に出走が確定しました。現段階では枠順は決定していないため、なんともいえない部分がありますが、出来れば後入れの偶数枠が欲しいところ。阪神1600は外枠有利とも言われますが、未勝利戦なら枠順はそれほど関係ないかな。ただ、気性の激しいこの馬にとって、無観客競馬は有利に働くことになりそうです。調教での走りを見る限り、能力は1級品です。後は気性面だけ。未勝利戦なら、まっすぐ走れば勝てそうです。
ここを勝てば、クラシック出走も視野に入ってくると思われます。気性が激しくとも少し真面目に走ればめちゃめちゃ強いという馬は、過去に何頭もいます。近年ではオルフェーブルやゴールドシップなど。この馬もなかなか制御が効かず、暴走する可能性を秘めています。いわば狂気を持った馬です。しかし、まともに走ったとしたら…
また注目したいのは、水口騎手とのコンビ。普段から調教に乗り、この馬に競馬を教えている騎手です。
現在、競馬界では外国人騎手や有力騎手に、騎乗が集中する傾向です。馬主も調教師もみんな勝ちたい、勝たせたいという思いがあるので、それは仕方の無いことです。しかし、以前の競馬界では、馬を育てるとともに騎手を育てるのが普通でした。今年に入ってまだ勝ち鞍のない水口騎手ですが、ぜひこのコンビで勝利を挙げていただきたいです。そしてゆくゆくはこの馬で、重賞に挑戦してもらえれば。
本当に強い馬というのはディープインパクトのように、コントロールの効く優等生な馬です。しかし、愛すべき馬と言えばやはり、とんでもないポカをするオルフェーヴルやゴールドシップ。制御の難しいこの馬をうまく操り、愛され語り継がれる馬になるのか、今週のレースに注目です。
結果(2020.5.30追記)
結果、外枠15番から果敢に逃げましたが、最後はバテたか4着でした。
レース後、水口騎手は「楽にハナに行けましたが、最後の直線で前に入られた時にびっくりしていました。まだまだ経験が必要ですが、人の指示に我慢しながら従えるようになりました。調教をしっかりできれば緩さが取れ、最後の踏ん張りが利くようになると思います。体が極端に減らなければ鍛える調教をしていきたいと思います。現時点で勝ち上がりやすいのは1400mだと思いますが、距離が持つ印象はあります」とコメント。
池江調教師は「着順は下がってしまいましたが、競馬の形としては成長がうかがえたと思います。馬がまだ緩い分、まっすぐ力強い推進力が生まれていない感じでしたが、これから気持ちの前向きさをコントロールできるようになり、調教を思うように積めるようになったら良くなってくると思います。今後については、レース後の馬体、飼葉食いを見て問題なければ続戦しますが、あくまで状態次第と考えています」と振り返っていました。
以上のようにバヌーシー内では報告がありました。
レース後のコメントからは、調教が思うように積めていないことがわかりますね。
DATA
父:ディープインパクト、母:ドナブリーニ、母父:Bertolini
性別:牝、生年月日:2017.01.27、毛色:鹿毛、生産:ノーザンファーム、池江 泰寿 厩舎