2021年8月の読書まとめ

8月の読書メーター

読んだ本の数:12
読んだページ数:3380

こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)感想
良い意味でラノベっぽくない青春小説。「オズの魔法使い」のキャラや物語に重ね合わせて、教室に居場所のない少年少女を描いている。ドロシー以外は屋上だけの関係性で話を進めておいて実際は…という、ある種叙述トリックのような展開も気持ちがよい。若干、自殺や殺人が軽く扱われているような印象もあるが、実際の高校生ならこういったのもあるのかもしれない。希望のある終わり方で良かった。ガガガ文庫では絶版になっているようなので、YA作品としてどこかの文庫で救済してくれたらなと思う。
読了日:08月30日 著者:カミツキレイニー

 

森の魔獣に花束を (ガガガ文庫)森の魔獣に花束を (ガガガ文庫)感想
少年と森に住む魔獣との交流を描いた、優しいファンタジー。血なまぐさい描写もあるけど、童話に近い印象。魔獣が名前をもらう一連のシーンが好き。青い薔薇や緋緋色鉄の剣の設定が最後まで上手く活きていて上手いなとも思う。異種間の交流を丁寧に描き、お涙頂戴にはしることなく、少年と魔獣がともに成長する姿を描いた良作。ガガガ文庫の単巻ものは、メインストリームから外れたところに面白いものが潜んでいるなと。
読了日:08月26日 著者:小木 君人

 

ハナシマさん (ガガガ文庫)ハナシマさん (ガガガ文庫)感想
連続猟奇殺人事件に都市伝説と幽霊を絡めた、ミステリ風ホラー。基本となる物語は楽しめたのだが、教授やその助手、幼なじみ男子の存在が思わせぶりなだけで足をひっぱている感じ。特に幼なじみ男子は探偵役かと思いきや全く活躍せず、そのくせ自分なら防げたのにとか言ってしまう訳のわからなさ。多分シリーズものとして、教授の下へ怪異が集まり、幼なじみ男子を今後活躍させるつもりなのだろう。ただこの巻では全く活きていないのが残念。民俗学や都市伝説をミステリに絡めた話は好きなので、この作者には今後も注目したい。
読了日:08月24日 著者:天宮 伊佐

 

カブ探 (徳間文庫)カブ探 (徳間文庫)感想
今大人気のオートバイ、スーパーカブを題材にした小説ということで、手に取ってみた。あらすじから探偵を主人公とする、アクションやミステリ的なものかと思っていたが、どちらかというと人情もの。親子関係や中年の恋愛を描いている。スーパーカブの良いところは排気量や馬力ではなく気楽さ、と書きながら、クライマックスにレースを持ってくるところに少し疑問。スーパーカブのウンチクは多いけど、気楽さや楽しさがあまり描けていない気も。カブ主には不人気のJA10をあえてメインにしているところが良いですね。
読了日:08月24日 著者:新美健

 

三億の郷愁 (ソノラマ文庫ネクスト し 1-1)三億の郷愁 (ソノラマ文庫ネクスト し 1-1)感想
著者自ら選んだタイムトラベルSF短編集。昭和犯罪史に名の残る3億円強奪事件を材にした表題作はじめ、昭和を舞台にしたノスタルジーを感じさせる作品が多い。どの作品も面白く、ハズレはない。著者はじめ、師匠である半村良、松本清張、赤川次郎など多作家の秘密をユーモアたっぷりに暴く?「バイライフ」が好き。パスティーシュやユーモア作品で有名な著者であるが、デビューがジュブナイルSF。派手さはないが、良いSF作品も多い。この本を気に入った方には、『黄昏のカーニバル』や『博士の異常な発明』もオススメ。
読了日:08月23日 著者:清水 義範

 

強いられた変身 (角川文庫)強いられた変身 (角川文庫)感想
眉村卓氏お得意のサラリーマンSF。多次元や「実感装置」なるSFガジェットを使って、日常の中で理解できない事象にであった時の心の動きや変化がしっとりと描かれる。タイトルの「強いられた変身」こそがテーマ。売れない文学者が生まれ育った街を訪れ、子供の頃の悪意のない残虐性を実感する様子を”録感”する「古い録感」が抜群に面白い。意外と正統派SFな「セリョーナ」や今だとカルト宗教として語られそうな団体を描く「真面目族」なども楽しめた。70~80年代を若者として、SFにハマった人は50歳を過ぎた今こそ、これを読むべし。
読了日:08月19日 著者:眉村 卓

 

素顔の時間 (角川文庫)素顔の時間 (角川文庫)感想
良い意味で枯れた感じの味わいのある短編集。SFというよりは、日常の中で不思議な現象に巻き込まれる(怪奇ではない)幻想小説といったところ。主人公はどの話もいまいちパッとしない中年サラリーマン。多分、若い頃に読んでもどの話も面白いと思えなかっただろう。50歳を過ぎ平凡な日常を過ごす今だと、しみじみと味わえる。過去につきあっていた彼女や同僚などとそっくりの人物に遭遇する「減速期」、子供の頃にとある男性からもらったメダルと自身の才能をめぐる「逢魔が時」の2つが良かった。
読了日:08月16日 著者:眉村 卓

 

侵入を阻止せよ (集英社文庫―コバルトシリーズ)侵入を阻止せよ (集英社文庫―コバルトシリーズ)感想
70年代ジュブナイルの名作「ねらわれた学園」の、80年代バージョンといえるか。眉村氏の端正な文章で、安定したジュブナイルの面白さを味わえる。主人公の通う学校に勉強の出来る人たちがやって来て、という始まり方は氏の作品ではよくあるパターン。「ねらわれた学園」では、知らないうちに独裁的になっていくナチスドイツ的な危険性を描いていたが、今作品では自主性を守る”戦い”を描いている。80年代の、学歴社会だとか、詰め込み教育だとかを批判した作品とも受け取れる。現在の世界は幻想世界なのかもしれない、という投げかけがSF。
読了日:08月12日 著者:眉村 卓

 

ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫)ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫)感想
筒井康隆の書いたラノベではなく、ラノベレーベルから出版された筒井作品くらいに考えるのが良いか。ラノベのテンプレを使いつつ、ラノベ読みを煽るような内容。筒井作品に親しんでいる人からすればいつもの笑える内容だが、まともに読んじゃうとナンジャコレとなるのかも。中高生向けではなく、大人が読んで楽しむ作品。美少女だから美少女、やけに暴力的な美少女、妹という設定だけの美少女、みんな中身がない。キャラ設定だけでもパロディというか、揶揄しているというか。エロいしグロいし内容的にそれほどではないけど、なぜか面白いんだよね。
読了日:08月12日 著者:筒井 康隆

 

NHKにようこそ! (角川文庫)NHKにようこそ! (角川文庫)感想
半自伝的引きこもり青春小説。読むのが辛くも面白く読み終えた。この本に共感できる人は、やはりひきこもり側の人間。よくわからない、コメディ的な意味で面白いと感じた人は真っ当な人なのだろう。私自身は鬱気味なネガティブ思考で、50歳過ぎでニートのような生活を送っているので、心に突き刺さるような内容だった。ボーイ・ミーツ・ガールなストーリーだと思うのだが、これをボーイ・ミーツ・ガールという人は少ない。健全な皆様が考える、ある種キラキラした物語ではないということだろう。主人公には岬ちゃんがいて、救いがあるなと。
読了日:08月10日 著者:滝本 竜彦

 

幽霊空間の謎を暴け―ハイスピード・ジェシー〈2〉 (ソノラマ文庫 297)幽霊空間の謎を暴け―ハイスピード・ジェシー〈2〉 (ソノラマ文庫 297)感想
80年代人気スペオペ第2弾。1巻に比べると、ちょっともの足りない感じ。軍の新兵器を乗せた宇宙貨物船の失踪をめぐる物語なのだが、幽霊空間とこの失踪をネタに軍を強請る組織の関係性がイマイチわからなかった。また、敵首領が側近2人の付け足しのように、あっけなくやられてしまうのでびっくり。ただ敵首領ベルトハイムの理想郷である海底都市に対する考えが面白い。いずれにしても人気作の2作目というのは、難しいものだと感じた。
読了日:08月09日 著者:斉藤 英一朗

 

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)感想
青春SF小説。面白く一気に読めた。ライトノベルというより、ジュブナイルというほうがしっくりくるかな。「外では大体6時間に相当するキス」というフレーズが気に入った。
読了日:08月02日 著者:八目 迷

8月の読書まとめ

8月は結果的にガガガ文庫の本をわりと読むことになった。『夏へのトンネル、さよならの出口』、『森の魔獣に花束を』、『こうして彼は屋上を燃やすことにした』の3作品は楽しめました。ガガガ文庫の単巻ものには良い作品が多いといわれているのですが、その通りだと。

また、改めて面白いと思ったのが、眉村卓氏のサラリーマンSF。50歳を過ぎた今読むと、これは面白いなと。多分、若い頃に読んでいてもピンとこなかっただろう。眉村卓氏の未読本はまだまだ積んでいるので、積極的に読んでいきたい。

眉村卓氏と対照的なのが、筒井康隆氏。『ビアンカ・オーバースタディ』はライトノベルとして出版された作品ですが、いかにも筒井氏らしい作品でした。筒井康隆は枯れないなと。

9月は「ハイスピードジェシー」シリーズの続きや、スニーカー文庫から出版された林譲治のガンダム作品なんかを読んでいきたいと考えています。