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自転車好きに贈る、自転車小説まとめ 27冊

さて、私は自転車が好きで、本を読むのも好きです。ということで自転車の登場する小説が、非常に気になってしまいます。自転車が登場するといっても、ただ自転車がでてくるだけではなくって、ロードレースであったり、自転車旅であったりと重要な役割をはたすものです。

そんなわけで自転車小説を読み漁っているわけですが、備忘録の意味も込めて、今回は自転車小説のまとめです。ずい分前に読んだものもあるので、詳しい感想は無しにして、星印の評価を添えておきます。未読のものは、未評価にしてあります。今後読み終わり次第、評価をつけていきます。

5.0 必読。これを読まずして、何を読む。
4.0 面白い。読んで損は無し。
3.0 面白い。楽しめます。
2.0 それなりに面白いかも。
1.0 時間があれば、読んでみるのも一興。

大雑把な評価ですが、もし読んだことがないものがあれば、参考にしてください。下へ行くほど、マニアックなものが登場します。あまり取り上げられることのない、ライトノベルや児童小説も登場します。

おすすめ3選

まずは、必読の3冊です。どれも楽しめること、間違いなしです。

サクリファイス 近藤史恵

ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた! 大藪春彦賞受賞作。

今や自転車小説といえば、まっさきに取り上げられる小説です。ロードレース小説にミステリーの要素を加え、物語へ一気に引き込んでくれます。ロードレースに詳しくなくても楽しめますが、ロードレースに関する知識があればさらに楽しめます。

5.0 必読。これを読まずして、何を読む。

自転車少年記 竹内真

自転車少年記
新潮社
¥209(2024/02/22 20:43時点)

幼い昇平の乗った自転車がスピードを出しすぎて飛びこんでしまったのは、草太の家の庭だった。ふたりは、その日、生涯の友と出会う。海まで必死にペダルをこいだ。強豪高校にレースで挑んだ。そして、東京発糸魚川行きの自転車ラリーを創った。もちろん素敵な恋もした。爽快無類の成長小説。

私の一番のおすすめ。413ページの2段組という、超ボリュームのある小説です。二人の少年と一人の少女を中心に、自転車とともに成長する姿を描く大河ドラマ。結構キュンキュンします。失恋をきっかけに、東京から糸魚川まで自転車で走る草太、彼女に合うために東京から仙台まで自転車で行く昇平、どちらも正しい自転車乗りの姿(笑)。同名の「自転車少年記―あの風の中へ 」とは内容が違います。ぜひ、単行本を。

5.0 必読。これを読まずして、何を読む。

男たちは北へ 風間一輝

東京から青森まで―緑まぶしい五月の国道四号線を完全装備の自転車でツーリングする中年グラフィク・デザイナー、桐沢風太郎。ひょんなことから自衛隊の陰謀さわぎに巻き込まれ、特別隊に追跡されるはめになった。道中で出会ったヒッチハイクの家出少年、桐沢、自衛隊の尾形三佐―追う者と追われる者の対決、冒険とサスペンスをはらみつつ、男たちは北へ。男たちのロマンをさわやかに描く傑作ロード・ノヴェル。

こちらは珍しい自転車xハードボイルドです。数少ない自転車旅の物語でもあります。男臭さが炸裂しております。自衛隊とのやり取りは非現実的ではありますが、物語を盛り上げてくれます。旅人の心がわかっている、そんな内容です。

5.0 必読。これを読まずして、何を読む。

以上が私のおすすめ3選です。次からは作家別に紹介します。

近藤 史恵

おすすめ3選にも紹介した「サクリファイス」の作者。自転車小説の第一人者と言って良いでしょう。「サクリファイス」以外の小説を紹介します。

エデン

エデン (新潮文庫)
新潮社
¥605(2024/02/23 12:42時点)

あれから三年―。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く…。目指すゴールは「楽園」なのか?前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ。

「サクリファイス」の続編、ツール・ド・フランスが舞台に。前作のようなサスペンス要素はあまりなくて、どちらかというとロードレースが中心になっています。レースにおける駆け引きなど、ちょっとマニアックになっているかも。

ドーピング疑惑を織り交ぜて物語が展開していきますが、サスペンスという部分では前作に比べると物足りなさが残るかも。

4.0 面白い。読んで損は無し。

サヴァイヴ

団体戦略が勝敗を決する自転車ロードレースにおいて、協調性ゼロの天才ルーキー石尾。ベテラン赤城は彼の才能に嫉妬しながらも、一度は諦めたヨーロッパ進出の夢を彼に託した。その時、石尾が漕ぎ出した前代未聞の戦略とは――(「プロトンの中の孤独」)。エースの孤独、アシストの犠牲、ドーピングと故障への恐怖。『サクリファイス』シリーズに秘められた感涙必至のストーリー全六編。

「サクリファイス」「エデン」に登場した人物を中心に描く、外伝的短編集。「サクリファイス」の世界を共有してはいますが、連作短編集ではなく基本的にそれぞれが独立した話なので、1冊を通しての物語の盛り上がりはありません。

しかし、石尾・赤城・伊庭など前作に登場したキャラクターを主役に、レースに向かう姿が丁寧に描かれ、「サクリファイス」「エデン」の物語をより深く楽しめる作品になっています。前2作を読んでからの読むのをオススメします。

amazonのレビューで自転車競技にかかわっている方が、”「死」「チーム不和と陰謀」「八百長勧誘と出場妨害」「ドーピング」 相変わらず、読後感は良くない。”と書かれているように、爽やかな物語ではありません。ただ、1作目の「サクリファイス」から、爽やかな作品ではないので、自転車競技の嫌な面を見たくない方は、避けた方が良いでしょう。ロードレースの世界を舞台にした、人間の物語です。

4.0 面白い。読んで損は無し。

スティグマータ

得体の知れない過去の幻影が、ペダルを踏む足をさらう。それでもぼくたちはツールを走る。すべてを賭けて! 黒い噂が絶えない、堕ちたカリスマの復活。選手やファンに動揺が広がる中、今年も世界最高の舞台(ツール・ド・フランス)が幕を開ける。かつての英雄の真の目的、選手をつけ狙う影、不穏なレースの行方――。それでもぼくの手は、ハンドルを離さない。チカと伊庭がツールを走る! 新たな興奮と感動を呼び起こす、「サクリファイス」シリーズ最新長編。

「サクリファイス」「エデン」「サヴァイヴ」に続く、4作目。今回もツール・ド・フランスを舞台に、ロードレースに参加する選手の人間模様を描いています。今回は過去にドーピングで引退した王者の復活を中心に、黒い噂を織り交ぜ物語は進んでいきます。

青春ロードレース小説のような、爽やかさはありません。「サクリファイス」シリーズにそれを求めるのは間違っています。主人公白石誓も30歳になり、選手生命の終わりを頭にちらつかせながら、それでもただ走るのみ。他のロードレース小説には無い、深みのある物語になっています。

ただし、これ単独で読んでも面白くは無いでしょう。1作目から順番に読むことをオススメします。

4.0 面白い。読んで損は無し。

キアズマ

キアズマ (新潮文庫)
新潮社
¥693(2024/02/23 12:42時点)

ふとしたきっかけでメンバー不足の自転車部に入部した正樹。たちまちロードレースの楽しさに目覚め、頭角を現す。しかし、チームの勝利を意識しはじめ、エース櫻井と衝突、中学時代の辛い記憶が蘇る。二度と誰かを傷つけるスポーツはしたくなかったのに――走る喜びにつき動かされ、祈りをペダルにこめる。自分のため、そして、助けられなかったアイツのために。感動の青春小説

単行本が発売された時は「サクリファイス」シリーズ4作目という扱いをされていましたが、「サクリファイス」の世界とは、ほぼ関係ありません。プロロードレースの世界ではなく、アマチュアのロードレースを描いてます。

オススメ度:未読

川西 蘭

青春ロードレース小説「セカンドウィンド」で有名な川西蘭。それ以外にも女子競輪を題材にした小説も書いています。

セカンドウィンド1~3

溝口洋、中学三年。宝物の元郵便配達用の中古の自転車で、毎日雲見峠に登る。ある日、チームジャージに身を包んだロードバイクの集団が風のように洋を抜き去っていった。速い。渾身の力で追走しても、その背中は遠ざかるばかりだった。負けたくない。その日から洋の疾走が始まった。初めてのレース、仲間たちと競い合う日々、友情や反目、そして出会いと別れ。自転車ロードレースを舞台に、悩みつつ成長していく少年たちの姿を爽やかに描いて絶賛を呼んだ大長編本格青春小説。第一部中学生編、待望の改訂新装版で登場。

最初「セカンドウィンド」1・2巻はピュアフル文庫という、ジュブナイル向けの文庫で発売されました。どちらかというと、中高生向けのイメージであります。なので内容としては、わりとあっさりめな感じです。ロードレース小説というよりも、青春小説です。

2巻を読んでからずっと続きが出ないなと思っていたら、第3巻から小学館に変更となっていました。表紙絵はピュアフル文庫版のほうが、良いですね。続きは出るのでしょうか。

3.0 面白い。楽しめます。

スパート!(あねチャリ)

十六歳の女子高生・早坂凛は、怪我でバレーボール部を退部、不登校になってしまう。ある日、川沿いの自転車道で元競輪選手・瀧口に出会い、スポーツバイクの解放感を知る。もっと速く、どこまでも走りたい。休学以来初めて凛が見つけた、生きる目標だった。競輪選手を目指す青年、競輪場に半世紀以上も通う老爺、安アパートの老貴婦人など、それぞれに心の傷を負った仲間たちと、世界最速の証「虹色ジャージ」を目指す闘いが始まる。凛は遙かな地平線の虹をつかむことができるのか?自転車競技を通じて、一度は挫折した人々の成長と再生を描く、スポーツ小説の傑作。

「あねチャリ」のタイトルで発売された小説の文庫化作品です。女子競輪(ケイリン)を題材にとった小説ですが、物足りなさが残るのみです。「スパート!」にしても、「あねチャリ」にしても、どちらもタイトルがいまいち内容を伝えていないですね。「あねチャリ」のタイトルはちょっとひどすぎると思うので、改題は良かったと思ってます。

2.0 それなりに面白いかも。

高千穂 遙

中高生の頃にはアニメ化もされた、「クラッシャージョウ」や「ダーティペア」で楽しませていただきました。今では自転車大好き作家として有名ですね。

ヒルクライマー

妻も娘も顧みず、四十歳で出会ったヒルクライムに全てを賭ける男。マラソンを捨て目標を失い、大学も中退した青年。そして二人を取り巻く坂馬鹿たち。彼らは坂の頂点を目指しひたすら登り続ける。「なぜ坂に登るのか?」それはロード乗りが必ず一度は直面する問いだ。なぜ重力の法則に逆らい、息も止まるほどの苦しさに耐えなければならないのか。長い坂を登りつめた果てに、待つものは何なのか。自転車で山に登る面白さに取り憑かれた作家が、自らの体験を元に描き尽くした日本初の本格ヒルクライム小説。坂に魅せられた者たちの、魂と肉体の再生の物語。

作者自身も40歳代から自転車にハマり、「ヒルクライマー宣言」という本を出してしまうくらいの、坂バカ。そんな作者が描く、ヒルクライマーの物語。

オススメ度:未読

グランプリ

十二月三十日、その年のG1優勝者や賞金王など九人の選手が、最速の称号と賞金一億円をかけて争う「KEIRINグランプリ」が開催される。過酷な自転車トラックレース、競輪に人生をかける男たちが挑む、年に一度の決戦への道を迫真の筆致で描き、読む者の血をたぎらせる自転車競技小説の傑作!妻への愛、友との友情、息子への想い、仲間との連帯を心に、男たちは熱き血を躍動させ、ただひたすら、ゴールへと走る!

こちらは漢字表記の「競輪」の物語。アマゾンのレビューを読むと競輪初心者にも理解しやすいように書かれているとのことです。

オススメ度:未読

ペダリング・ハイ

大学進学のため上京した日夏竜二は、通学に使うママチャリを買おうと立ち寄った深大寺サイクルで、居合わせた客達に囲まれ、ロードバイクを買わされてしまう。そして、おせっかいで情熱的なおじさん達と練習するうちに、竜二はロードバイクの世界にどっぷりと浸っていく。代役で初出場した草レースでも入賞してしまった竜二は、ロードレースの楽しさにも目覚めてしまった。さらに、ライバルとも言える圭と出会い、実業団レースに臨むことを決意する。
日本初の自転車山岳レース小説にしてロングセラーを続ける『ヒルクライマー』の著者による、ロードバイクに乗ったことのない人も楽しめる本格ロードレース小説。

自身もロードバイクに乗り、ヒルクライムレースに参加するほどの人なので、自転車に関する描写は的確。レースの駆け引きなども、リアルに描かれており、自転車好きな方が読んでも違和感を感じることはないでしょう。

ただ、少々出来すぎた話で、少年の成長物語としてみたときには、物足りなさが残ります。少年の成長を楽しむというよりも、少年を取り巻く大人たちの物語として読む方が楽しめます。

3.0 面白い。楽しめます。

追記:2019年12月文庫化されました。ラノベ風表紙から、一般小説らしくなりました。

竹内 真

おすすめした「自転車少年記」の作者です。それに関連するものを2冊書いています。

自転車少年記―あの風の中へ

あの日、僕は、親友の草太、伸男と、自転車で走り始めた。生まれ育った南房総の風ヶ丘から、目指すは大都会・東京。新世界への旅立ちだ。喜びや挫折を味わいながら、僕らは夢に向け、ペダルをひたすら漕ぎ続けた。仲間と、東京から日本海を目指す自転車ラリーを完走した。もちろん素敵な恋もした。単行本版『自転車少年記』の構想を元に新たに書き下ろされた、爽快無比の成長小説!

単行本版「自転車少年記」と違い、昇平を主人公として、書き直した作品です。単行本版を読んだ後に読んだほうが楽しめると思います。単行本版には書かれていない、その後も書かれています。

4.0 面白い。読んで損は無し。

自転車冒険記 12歳の助走

自転車冒険記---12歳の助走
河出書房新社
¥1,118(2024/02/23 17:11時点)

昔、東京から日本海まで自転車で行こうとした父さんは、夜、道に迷っても北斗七星を道しるべにして走り抜いた。だから、僕の名前を北斗と名付けた。『自転車少年記』の昇平の息子・北斗が、はじめての、自分だけの旅に出た。

自転車少年記の昇平の息子、北斗が東京ー大阪600kmを自転車で挑む物語。数少ない自転車旅の小説です。

旅をして、ちょっと冒険して、成長する少年の目線と、それを見守り応援する父親の目線。二つの目線が交差することにより、ただの旅行記ではなく、少年の成長とともに、親も一緒に成長していく、親子の物語になっています。

北斗を主人公とした新たな物語であると同時に、「自転車少年記 あの風の中へ 」の続編でもあります。

4.0 面白い。読んで損は無し。

土橋 章宏

映画「超高速!参勤交代」の原作・脚本で知られる作者ですが、自転車小説も書いています。

スマイリング! – 岩熊自転車 関口俊太

函館市内の中学校に通う関口俊太は、ロードバイクにあこがれていた。だが、父は失踪。母は水商売で、お金も愛情にも恵まれず、一人、ママチャリでトレーニングする毎日だった……。そんな俊太を回りは憐れみ、あるいはからかう。だが、ある日、岩熊自転車という自転車屋の店長との出会いが、俊太を変えることに!
『超高速!参勤交代』の著者による助け合うことの大切さと、最後まで諦めないことの意味を教えてくれる成長物語。

普通に読めばジュヴナイル小説・青春小説のような、成長の物語と読めます。貧困やネグレクトの問題を跳ね返すような成長譚です。

しかし、ママチャリのフレームをぶった切って作り直す、フレームに穴を開けて軽量化など、ちょっと突飛かなと思えるところも。レースシーンでのドリフト走行や、コースを外れたときに大木をキックしてコースに戻るなど、漫画的なところも好みの分かれるところでしょう。

自転車オタク的な見方さえしなければ、青春小説として楽しめます。

3.0 面白い。楽しめます。

眠り姫のロード – スマイリング!2

しまなみ海道沿いの中学に通う巧海、千佳、啓太の三人に、ある日、四台のロードバイクが届けられた。なんと世界的ロードレーサーからのプレゼントだという。これを機に「ツール・ド・しまなみ」に出場することを決意した三人は、地域おこしに来ていた女性の桜井にコーチを依頼。だが、しだいに桜井のつらい過去が明らかになり―。

「スマイリング!」の第2弾。と言っても続編ではなく、主人公も舞台も変わってます。

前作のようなライトノベル的・漫画的なところは少なくて、本格的な青春ロードレース小説として、読むことができます。今回もレースシーンは短くて、ちょっと物足りなさも残りますが、中学生3人の関係性も含め、楽しむことができます。

前作では貧困やネグレクトの問題を扱っていましたが、今回は地方の後継者問題をそれぞれの中学生に絡めさせて、物語に深みを与えています。

3.0 面白い。楽しめます。

山口 理

児童文学を中心に活動する作家です。

おーい 日本海!すみ子の自転車日本横断

小学6年生の女の子が、お父さんといっしょに自転車日本横断をする物語。作者の実体験を元に書かれています。旅を通しての成長物語ではありますが、父と子の物語でもあります。自転車旅の楽しさや苦しさが、余すところなく描かれています。

児童書なのであっさりした内容ではありますが、大人が読んでも楽しめます。

3.0 面白い。楽しめます。

エリアは北へ―自転車の旅1000キロ

小学6年生の男の子が、自身の名前のルーツを求め礼文島目指して自転車で走る物語。自転車旅を通して、少年の成長を描いた良作です。

現在、自転車を題材とした青春成長小説というと、ロードレースものがばかり。人と競い合うことだけが成長のきっかけではないと、この本を読むとわかります。小学校高学年~中学生の子に読んでいただきたい小説です。

3.0 面白い。楽しめます。

その他

複数冊出していない作家の作品です。

イノセント・ツーリング 湊ナオ

イノセント・ツーリング
日経BP日本経済新聞出版本部
¥1,670(2024/02/24 17:42時点)

その春。すべての居場所から締め出されていた。すべての日常が止まってしまった。それがこんなに大変だったなんて! 私たちはなんて小さくて、無防備で、ばらばらだったんだろう? みんな平気なのかな? そんなわけ、ないよね? だから……コロナ禍の夏を過ぎて、それまでの日常にかまけて放っておいた大切なものを確かめに自転車の旅に出た。そこで。

2020年の9月、40代女性と大学時代の親友の夫とその息子が紀伊半島に自転車ツーリングに出かける物語。女性を主人公とした、自転車ツーリング物語は珍しい。ただセンチメンタルすぎで50歳過ぎのおっさんには共感しにくい物語でしたが、自転車乗りとしてみた場合、共感できる描写などが多々ありました。

登場する自転車はロードバイクではなくランドナー。海岸線を走る気持ちよさ、峠道を担ぎで上がる苦しさ、仲間と旅する楽しさ、すべてひっくるめて自転車で旅する楽しさが、この著者はわかっているなと。物語の重要な部分は、女子自転車ツーリングあるあるなところ。男性の立場としては、心苦しいというか、申し訳ないというか。

ただ、コロナ禍での物語ではありますが、あまりそのあたりは関係はないですね。

3.0 面白い。楽しめます。

銀輪の覇者 斎藤純

戦争の足音が忍び寄る昭和九年、軍部の暗躍から実用自転車を使用した前代未聞の本州縦断レースが開催される。多額の賞金を狙い寄せ集めチームを結成した響木、越前屋、小松、望月の四人は、各々異なる思惑を秘めつつ、有力チームと死闘を繰り広げるが…。一攫千金を目論む出場者の悲喜劇、ロードレースの戦略や駆け引きを、日本推理作家協会賞作家が圧倒的なリアリティで描く、感動の自転車冒険小説。

2005年版「このミステリーがすごい」第5位にランキングされた作品。ミステリー要素を含む自転車冒険小説ではありますが、ロードレース小説として読んでも面白い。レースの戦略や駆け引きが、きちんと描かれています。また、途中にはアクシデントがあり、それらをチームで乗り越えていく展開は、レース小説の王道。

太平洋戦争一歩手前である時代や、実用自転車でのレースということにも、きっちりと意味があり、読んでいて納得ができます。

430ページ、2段組という、ボリュームのある小説で、読書好き以外には、ちょっと勧めづらいかなとも思います。内容的には星5つですが、その辺も含めて、星4.5にしています。

4.5 面白い。読んで損は無し。

追い風ライダー 米津一成

自転車は人生までも遠くへ連れていく。別れと出会い、思い出、勇気、そして恋…。若き未亡人、商社勤めのOL、くたびれたサラリーマン、サイクリングイベントのコース作りに挑戦する男性、沖縄出身のおミズの女の子―。自転車を通じて軽やかに繋がるそれぞれの物語。多くの人を新たに自転車のとりこにした人気エッセイストの初のロードバイク小説。プレミアム加筆で文庫化!

ロードバイクを中心とした小説ですが、ロードレース小説ではない、日常を描く連作短編小説集です。ロードバイクを手に入れたことにより、新しい生活に一歩踏み出す様子が、爽やかに描かれます。

自転車漫画でいうと、宮尾岳「並木橋通りアオバ自自転車店」のような優しい作品です。爽やかで読後感が非常に良いです。

4.0 面白い。読んで損は無し。

アウター×トップ 神野 淳一

アウター×トップ (メディアワークス文庫 か 5-1)
アスキー・メディアワークス
¥1(2024/02/24 10:20時点)

大学2年生の橋沢京助は、友人の神埼悠宇と自転車ロードレースに参戦し、プロを目指していた。だが、京助はレース中に落車して重大な怪我を負ってしまう……。自転車に全てを捧げた若者たちの青春群像。

大学生の京介と親友の悠宇、悠宇の妹の有季を中心として、トレーニングとレースの日々が描かれています。ロードレース中の駆け引きや、トレーニングの内容が、リアルに丁寧に描かれていて、青春ロードレース小説ではあるけれど、ロードレースに比重がおかれている感じです。

主人公たちの背景に深みが無いので、やや物足りなく感じるものの、少年漫画的な王道のストーリー展開で、一気に読ませてくれます。自転車が好きな方、ロードレースが好きな方には、オススメ。

3.0 面白い。楽しめます。

エスケープ・トレイン 熊谷 達也

サイクルロードレーサーの小林湊人が所属するエルソレイユ仙台に、梶山浩介が加入することになった。梶山は、16年前にヨーロッパに渡り、ツール・ド・フランスにも8回出場、世界のトップレベルで戦ってきたレジェンドだ。今季限りでの引退も囁かれていた梶山が、なぜ日本の、しかも新参チームに…。図抜けた実力を持つ梶山の加入でチームは、そして期待されながらもどこか抜けたところのある湊人は、どう変わっていくのか?

直木賞作家の熊谷達也が描く、プロロードレースの世界。レジェンド的存在により、その才能を覚醒させる選手の物語。上記の「アウター×トップ」や「ペダリング・ハイ」と同じような印象。直木賞作家の作品だからと期待すると、肩透かしを食らうかも。

淡々と展開するロードレース小説を読みたい方やロードレース小説初心者には、オススメかも。

3.0 面白い。楽しめます。

追記:2022年2月文庫化されました。

風のヒルクライム ぼくらの自転車ロードレース 加部 鈴子

山や丘陵の上り坂に設置されたコースを走る自転車ロードレース=ヒルクライム。
13歳の誕生日、突然ロードバイクを医師の父親から贈られ戸惑う少年・涼太は、その一方的なやり方に反抗心を覚えたことから、勢いでレースに出ることに。
両親に夢を託されている同級生、ママチャリに学生服のままで激走する高校生、涼太父の元患者父娘、ボランティアスタッフの女子高生…。
さまざまな人々の思いをレースの過程でつなぐ、息もつかせぬ展開。さわやかな自転車疾走小説!

爽やかなジュブナイル小説。さっくりと読めて、読後感もよい。ヒルクライムレース小説として読むと、物足りないかもしれません。レースを描くというよりも、そこに参加している人たちの、人間模様を描いております。

3.0 面白い。楽しめます。

走って帰ろう! 加藤 聡

走って帰ろう! (ファミ通文庫 か 9-1-1)
KADOKAWA(エンターブレイン)
¥1(2024/02/22 20:43時点)

大好きな亜希子ちゃんにフラれた高校生の卓也を待っていたのは、夜逃げした両親の借金12億5千万円と黒スーツにグラサンのヤクザだった!莫大な借金を返すため、卓也は競走馬のオーナーを夢見るヤクザ原田のもと、非合法自転車レースの選手となる。『倒産』『丘サーファー』『赤い彗星』奇妙なレースネームの仲間と走る全長10kmの周回レース。走行妨害、落車、ドーピング…そんな中で、卓也がしかける大勝負とは!?第7回えんため大賞「優秀賞」受賞作。

ファミ通文庫から発売された、ライトノベル。草レースが舞台という、珍しい小説です。内容はというと、ライトノベルですからというもの。こんな小説もあるということで。

1.0 時間があれば、読んでみるのも一興。

ツール・ド・ガールズ!! さいき きょうや

天才サイクルロードレース選手の少年・狼堂迅人は、世界大会での優勝を目前にして、怪我により競技の道を断念することになった。失意の日々を送る迅人だが、縁あって高校の女子自転車競技部の監督を務めることになる。世界大会の女子部門“ツール・ド・ガールズ”優勝を目指す部長の小鳥遊あひるをはじめ、個性豊かなメンバーたちのひたむきな様子に、当初は気乗りしなかった迅人の姿勢も次第に変化していく。しかし、そんな彼女たちの前に、迅人と深い因縁のある世界トップクラスの選手、シュリック姉妹が現れ…?「あたしは―あたしの大好きを証明したい」第5回チャレンジカップ“優秀賞”受賞の青春自転車ストーリー!

ロードレースx萌な小説。最初は普通の青春ロードレース小説と思わせつつ、いきなりでてくる必殺技にびっくり。「賢狼の魔爪(アビリティハンド)」や「脚技(アクセルアーツ)ー双牙(デュオ・ファング)」などなど。まともに読んではいけません。

1.0 時間があれば、読んでみるのも一興。

止まらないで自転車乙女 阿羅本 景

「誰だって自転車くらい乗れるのは当たり前」高校生・秋山陸の思い込みを木っ端みじんにしたのは、名門女子校『白輪館女学院』中等部に通うお嬢様たちだった。乗れないのに情熱的で自転車好きの千晶。高飛車で自転車を見下す沙羅。男性&自転車恐怖症の綾音。そんな一癖も二癖もある少女たちのコーチとなった陸の七転八倒が始まる。止まるな、漕げ、そうしないと自転車は転けるんだ―ボーイミーツガール・ウィズ・サイクル、ここに開幕!

自転車に乗れない女の子たちを、乗れるようにして、最後は40kmほどを走るという内容。萌えとハーレム設定に、意味のない入浴シーンなど、良くも悪くも、ライトノベルらしい作品。

自転車を題材にしてはいますが、自転車が好きな方にはおすすめできません。自転車に興味のない人のほうが楽しめるかも。なお、作者の阿羅本景は漫画「ろんぐらいだぁす!」のノベライズも手がけております。

2.0 それなりに面白いかも。

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