東京-大阪600kmを自転車で挑む物語、『自転車冒険記 12歳の助走 (竹内 真)』を読んで【読書メモ】

さて、今回の読書メモは、小学校を卒業したばかりの少年が、東京ー大阪600kmを自転車で挑む物語、「自転車冒険記 12歳の助走」。数少ない自転車旅の小説です。

「自転車少年記 あの風の中へ 」の主人公である昇平の息子、北斗が今回の主人公。

「冒険がしたいんだ」小学校を卒業した翌日からの春休みで、東京から大阪まで600kmの自転車旅を計画する北斗。親からの許可を得るために、あれやこれやと手を尽くすところから物語は始まります。

無鉄砲に飛び出すのでは無く、しっかりと計画を立てられていること、およびその行程にこれは冒険と言って良いのか、と思うことも。この旅の計画は、大人のアドバイスもあり、少年なりにきっちりと考えられているのです。しっかりと予定が組まれているのは、冒険では無く自転車旅だなと。

元々スポーツサイクルに乗り慣れている主人公ですが、600kmの距離は、未知の距離といって良く、それ故に冒険としているのだなと最初は思いました。

元自転車少年である父の許可は、簡単に得られるのですが、母親が強敵。親と子、ともに妥協点を見つけ、旅は決行されることに。最初は北斗ひとりで、旅に出る予定でしたが、父が車でサポートを務めることに。

東京・日本橋をスタートして、初日の目的地は熱海。予定したルートを順調にこなしていく北斗に対して、父の昇平はトラブルに巻き込まれていく。

旅に出てからはツイッターやブログを通してのやりとりもあり、非常に現代的。そのやりとりも少年らしさがあり、読んでいて楽しい。中盤からはサポートするはずの父親がなかなか追いついてこず、不安になる少年の姿もきっちり描かれております。

初日の旅が丁寧に描かれていて、このペースだと、大阪まではたどり着けないのでは?そう思い始めると思います。結果は…

自転車で走っている行程は、ただの自転車旅の話です。本当の冒険記は熱海に着いてから。父親がなかなか追いついてこず、一人で不安な時間を過ごす少年。ここで起こったことこそ、本当の冒険。予定に無かったことを、大人に相談しながらですが、自身の行動で乗り越えていくことこそ、冒険であるのだろうと。

そして冒険をする少年の物語ではありますが、父親の物語でもあります。かつての自転車少年が、大人になり、親になり、息子が冒険に出たいと言い出す。結局はサポートという名目で、一緒に旅に出ることになる。これは「自転車少年記 あの風の中へ 」の続編でもあります。「自転車少年記」のキャラクターたちもきっちり登場して、話を盛り上げてくれます。

旅をして、ちょっと冒険して、成長する少年の目線と、それを見守り応援する父親の目線。二つの目線が交差することにより、ただの旅行記ではなく、少年の成長とともに、親も一緒に成長していく、親子の物語になっています。タイトルからは、青春小説の印象を受けますが、もっと深い物語であります。若い頃読むのと、年を経てから読むのでは、受け取る印象も変わってくるでしょう。

父親目線を補完するためには、前作「自転車少年記 あの風の中へ 」を読んでから、こちらの本を読むのがオススメです。

「次は、準備や協力だけじゃ無くて一緒に走る仲間や競い合う相手もいて欲しい。」そんな風に感じた、北斗のその後も、ぜひ読んでみたいと思いました。

オススメ度:

4
 面白い。読んで損は無し。