【80年代ちょっとマイナーなロボットアニメ】『巨神ゴーグ』は幻の名作なのか?【アニメメモ】

さて、今回はアニメについてです。台風がやって来て3日間ほど雨続き。なんとなく80年代ロボットアニメを見たくなって、Dアニメストアに加入して、80年代ロボットアニメを見まくってやろうと。

第1弾は名作・傑作・良作といわれるも、いまいちマイナーアニメの域を出ない、安彦良和監督『巨神ゴーグ』をイッキ見した感想です。

巨神ゴーグ(ジャイアント ゴーグ)

出典:dアニメストア

1984年4月5日~9月27日、テレビ東京系で毎週木曜日、19:00 – 19:30の枠にて全26話が放送。日本サンライズ制作。

あらすじ

亡き父の友人ウェイブを訪ねた悠宇は、“GAIL”という組織から命を狙われる。どうやら、父が研究していた南洋の孤島“オウストラル”の秘密が絡んでいるらしい。敵の追跡を逃れつつオウストラル島に向かった悠宇は、突如現れた青い巨人型ロボット“ゴーグ”と出逢う。島に隠された秘密を巡る悠宇の冒険が始まる…。

スタッフ

原作:安彦良和/原案:矢立 肇/監督:安彦良和/脚本:辻 真先、塚本裕美子/キャラクターデザイン:安彦良和/メカニカルデザイン:佐藤 元、永野 護/音楽:萩田光雄

放送された時代

『巨神ゴーグ』が放映された1984年当時のロボットアニメの状況です。1969年生まれの私は当時15歳くらいで、バリバリのアニメマニアでした。そんな私の個人的見解ですが、『巨神ゴーグ』の当時の立ち位置を考えます。

ゴーグが始まった84年4月の時点で放映されていたのが、特装機兵ドルバック、銀河漂流バイファム(この2作は前年10月開始)、重戦機エルガイム、超攻速ガルビオン(この2作は84年2月開始)、ビデオ戦士レザリオン(3月開始)。ゴーグと同じ4月開始が、超時空騎団サザンクロス、ゴッドマジンガー。(私はゴーグとレザリオン以外は見ていました)

これらのタイトルの中から現在も名前が通用するのは、エルガイムとバイファムくらいでしょうか。ゲーム『スーパーロボット大戦』などで、タイトルやメカだけ知っているという人も多いかもしれません。他の作品は当時見ていた人は別として、よほどのロボットアニメ好きで無い限り知らないタイトルが多いと思います。

この年に劇場版アニメ『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のヒットがあったものの、『機動戦士ガンダム』をきっかけとして始まった、リアルロボットアニメブームもやや翳りが見えてきた時代です。そんな中始まった『巨神ゴーグ』ですが、放映がテレビ東京系で、私の住む和歌山県では放送されませんでした。ガンダムのキャラクターデザイナーである安彦氏監督作品ということで、見たいと思っていましたが見ることが出来ず。私のように、見られずに悔しい思いをした地方のマニアも多かったかもしれません。

でも、当時の評判は良くなかった印象です。同じくテレビ東京系のため、和歌山で放送の無かった前年放映の『装甲騎兵ボトムズ』の評判はファン同士、アニメ雑誌、プラモ雑誌などから伝わってきたのですが、『巨神ゴーグ』はさっぱりでした。面白い作品であれば、もっと当時はファンが活発な活動をしていたはずです。

原因はタイトルでロボットアニメと思わせておいて、それほどロボットの活躍するアニメでは無かったからでしょうか。当時のリアルロボットアニメブームからは外れていたわけで。ゴーグのビジュアルからは、ボトムズのような作品を求めていたわけでは無いでしょうが、それなりにロボットアニメとしての期待があったわけです。とうぜんプラモデルも売れなかったようです。

放送終了後も『巨神ゴーグ』は盛り上がることも無く、そのまま忘れ去られていった作品といって良いのかもしれません。

なお、当時『巨神ゴーグ』を見ていた方で高い評価をされている方も多数います。ここに書いたのは、実際に作品を見られなかった地方在住者の個人的見解です。

感想

『巨神ゴーグ』を見たのは、今回が初めてです。現在では名作との評価があるのを知りつつ、ちょっと懐疑的に見ていました。

まず、これはロボットアニメではありません。タイトルに”巨神”とあるように、ロボットというより大映映画『大魔神』のような”神”的存在に思えました。終盤ではロボットらしくはなりますが…

物語としては、オウストラル島の謎を巡る少年少女の冒険活劇といったところ。わずかながら東宝特撮怪獣映画の匂いもします。

スタートはアメリカニューヨーク。そこからオウストラル島へ渡るまで3話。アクションシーンなどはがんばっているけど、ただのおっかけっこを繰り返すだけでつまらない。4話目でやっとゴーグ登場。悠宇とゴーグの出会いのシーンは非常に丁寧に描かれていました。

15話くらいまで、よくわからないまま島をひたすら進むゴーグと主人公一行。それに絡む大企業ガイルの軍隊(一企業がこんな軍事力を持てるのかも疑問)。同じような戦闘を繰り返す、このあたりはひたすら退屈でした。

主人公の行動などでなんじゃこりゃと思うこともあり、何度か見るのをやめようかと思いました。たとえばDr.ウェイブが洞窟に消えて、主人公・悠宇とアロイが洞窟へ入っていく話しとか、悠宇とドリスで魚を捕りに出かけて捕らわれるとか、追われている立場なのに何で勝手な行動をするのか理解不能。子供らしい冒険的なエピソードのつもりかもしれませんが、意味不明です。

15話くらいからやっとオウストラル島の謎らしきものがわかりはじめて、物語が動き出します。ここからはゴーグ・悠宇一行、異星人、ガイル勢力と三つ巴の関係になって、話しは面白くなっていくはず。ですが、なにか今ひとつ納得できない。オウストラル島の謎を解き明かしてどうこうというより、ガイル勢力を中心とした世界情勢とか、人間ドラマが中心となっていくようで、今ひとつといったところです。

核攻撃をされることがわかった上で島に残る人々の終末への過ごし方、核攻撃から島を守る異星人の思い、ゴーグとの別れなど、なんだか感動的な感じのラストですが、全く面白いとは思いませんでした。

何でこんなに面白いと思えないのか、2日ほど悩みました。名作という人もいる中で、こんなに楽しめない私の人間性に問題があるのか? それとも50を超える年齢か? いや、そんなことはないはず。

たどり着いた答えは、主人公がそれほどオウストラル島に興味が無いことが、面白くない理由ではないかと。ゴーグと出会ってからの悠宇は島の謎を解こうというより、ゴーグに連れられていくだけで、この島にはどんな秘密が隠されているのかといった興味はありません。15話まで積極的にこの島の謎を探ろうとするわけでも無く、訳もわからず島を進んでいくだけです。

しかもゴーグの謎を知りたがるDr.ウェイブを、ゴーグの中に入れることすらしないのも意味不明です。ゴーグという存在の謎を調べようともしていないのです。オウストラル島の謎を調べたいと思って訪れたはずのDr.ウェイブが全く機能していません。ゴーグと心が通じ合うとか、そんなことでごまかしている感じです。

目的もわからずひたすら島を進む物語が興味を引きつけるわけが無く、毎回の話しでドラマを作るしかありません。ひたすら同じような戦闘するか、前述した追われている緊張感の無い意味不明の回が作られるのはこういったことからでしょう。

オウストラル島には何かあるぞという話しのはずが、主人公は不思議には思うものの特に興味が無さそう。だから謎らしきものがわかりはじめる15話までは、ひたすら退屈なわけで。視聴者としては、オウストラル島の謎が知りたいのに、そこに向かっていかないのが面白くない1番の理由ではないかと。主人公に共感が出来ないということです。

また、オウストラル島の謎である、異星人・マノンと接触した後も意味不明です。この3万年眠っていた異星人は、文明レベルが同じくらいの人類と接触したかったから、オウストラル新島が浮上させたのでは無かったのか(自然現象により浮上したのかは不明)。ガイルが島を掘り起こしているのに、自ら接触しようとはせず、ガイルが入り口を破壊したことにより、逆上して人を殺しまくる始末です。

そもそもマノンはガイルの面々とは会話すらしていません。入り口を爆破しただけで、悪と決めつけるこのマノンの狭量さはなんなのでしょうか。3万年待っていたのは何故? ゴーグが連れてきた悠宇とすらコミュニケーションを取ろうとしない姿をみると、もう3万年ほど眠っておけと思ってしまいます。

あと島にいる、ガイルや悠宇を襲ったクラゲみたいなロボットはなに? そもそも3万年ゴーグはどこで何してた(海の中で眠っていたの)? 異星人の血を引くと思われる長老は何? などなど、最後まで島の謎にまつわる問題を解決させずに、ガイルの面々や船長を中心に人間ドラマが描かれるのも、意味不明でした。

最終的にこの物語にはちょっとした感動はあれど、爽快感・カタルシスが全くなかったような気がします。あえてそれがリアルなのかもしれませんが、それはこういったアニメには求められていないでしょう。そういうところをあえて面白いという人もいるでしょうけど。

と面白くない点ばかりを書いてきましたが、最後に良いところ。

作画レベルが高い。当時のアニメでは回によっては、見ていられないレベルの作画崩壊があったものです(マクロスとか)。

あと人間をよく描けているところが、良いところでもあり悪いところ(物語の邪魔)でもあります。特にガイルのゴトー・オウストラル支社副社長は核攻撃に備え真っ先に逃げ出したり、社長であるロッドに対して嫌そうな顔をするなど、人間くさいキャラクターで非常に良かったです。

最後に50を過ぎたおっさんが見て感動できる物語ではありませんでしたが、若い人が見たら感動できるのでしょうか? 同じ少年少女の冒険もの『未来少年コナン』や『天空の城ラピュタ』は何度見ても面白いと思えますし、少年少女の行動に共感できるのですけどね。これが宮崎駿監督にあって、安彦良和監督にないもの、才能の違いといったところでしょうか。

評価

総合 3.0

ストーリー 2.0

作画 5.0

どんなに作画が良くても、ストーリーに魅力が無いので、評価は厳しいものとなってしまいます。マイナーアニメの中では、酷くはないものの魅力も少ない作品と思います。

その他

この作品を持ち上げた記事が、文春オンラインにあります。

令和に再評価されるべき幻の名作『巨神ゴーグ』に、作家・安彦良和の神髄あり | 文春オンライン
漫画家/アニメーター・安彦良和のファンで『機動戦士ガンダム』(’79年)を知らぬ者はいないだろうが、ひょっとしたら『無敵超人ザンボット3』(’77年)を知らぬ方が世代的に現れてくる頃かもしれない。もう…

安彦良和ファンを自認する人が、作家・安彦良和を肯定した上で書いた記事なので、「作家・安彦良和の“本質”を知るためのうってつけのテキスト」なんて書いております。しかし、その書かれている内容では「リアルロボットものでは無く『宝島』的少年冒険譚を目指していたものの、最後には人間ドラマが入り乱れ、少年冒険譚は姿を消していた」とあり、はたしてこの記事を書いた人は何を面白いと思ったのか全くわかりません。ロボットアニメでも、冒険活劇でも無く、人間ドラマが面白いのか?

何が言いたいのかよくわからない記事ですが、このアニメを語り継いでいただきたいと書いているので、今回、私も感じたことをそのまま語り継いでいきたいと思います。

また、ちょっと興味深い記事があります。2012年に北海道新聞夕刊で連載された「私のなかの歴史 オホーツクから『ガンダム』へ─」という安彦氏の連載コラムです。実際の新聞記事は有料で無いと見られないのですが、その記事から抜粋された内容を個人の方のブログで読むことが出来ます。

安彦良和先生の自分史(中編) - 別冊「バビル2世」マガジン
「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

その中に『巨神ゴーグ』についての話があります。

「巨神(ジャイアント)ゴーグ」(84年)は、できてから放送まで半年待たされたロボットものです。おもちゃ会社に「売れるコンセプトが見つからないから時間が欲しい」と言われた。スポンサーが待ったをかけたら当然、放送枠は取れない。「売れなくてもいい、好きにやりなさい」って言われて好きにやったら、あまりにも魅力がなかった。
「ビームが出たり変型したりはしません」「じゃ、何するんだ」「石を投げます」「それだけか!」と(苦笑)。
確か、石を投げるおもちゃは出たんだよ。売れやしない、そんなの。
クラッシャージョウはガンダムの余韻があったから、そこそこ受けるとは思った。その次で一勝負かな、と考えていたらゴーグが空振りで、アニメ屋としての気持ちが切れた。

出典:別冊「バビル2世」マガジン 安彦良和先生の自分史(中編)より

wikipediaに書かれている内容の引用元となった記事が、この北海道新聞でのコラムのようです。自身で「あまりにも魅力がなかった」「ゴーグが空振り」と失敗を認めているようです。

安彦氏はこの後『ヴィナス戦記』を最後にアニメ業界からは引退することになります。アニメーター、キャラクターデザイナーとしては評価はされていますが、アニメ監督としての評価は自他共に低いといって良いのかもしれません。

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